【新国立競技場問題】すっかり悪者にされて「ラグビー協会」嘆きと怒り

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 一連の騒動で、踏んだり蹴ったりだったのが、ラグビー協会である。さんざん「悪者」にされた挙句、「新国立でW杯」の夢は露と消え――。当事者に今の感想を聞いてみた。

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「近所の人や友人と話していても、“好い加減、ラグビー協会が折れたらどう?”と言われてばかりでしたよ」

 と言うのは、当の「日本ラグビーフットボール協会」で副会長を務める、貴島健治氏である。

「でも、うちだけが悪者みたいに言われていたのは、ずいぶん不満でした」

 そう正直に嘆き節を吐露してくれたが、確かに彼らへの風当たりは強かった。

 政治部デスクが言う。

「ザハ案見直しの最大のハードルが、ラグビー協会とそのドン・森元総理でした。五輪の前年に開かれる日本で初めてのラグビーW杯では、新国立で開幕戦と決勝を行うことを世界に約束していた。しかし、見直しが決まれば、W杯に完成が間に合わなくなり、日本はメンツ丸つぶれ。そこで最後まで抵抗したのです」

 一方の世論は8割が見直しに賛成。粘る森氏とラグビー協会に、国民から反感が生まれたのは当然なのだ。

 他方で、

「新国立について横槍を入れてきたのは、オリンピックの方だよ! うまくいかないのをラグビーのせいにされたのは心外だね!」

 とまくし立てるのは、政界においてW杯開催に向けてのおぜん立てをしてきた「ラグビーW杯2019日本大会成功議員連盟」のさるメンバーである。

■“迷惑はこっちの方!”

「そもそも、国立の建て替えの発端はラグビーW杯のため。4年前、我々議連が決議を出し、JSCもその方向で検討していた。そうしたら、後からオリンピックもそのスタジアムで、という話になり、実際、2年前に五輪開催が決まったんだ。はじめに議連が試算を出した時は、確か1000億円にも満たなかったのに、ザハ案みたいなのを通し、あんなに費用が高くなってしまった。迷惑したのはむしろこっちの方だよ!」

 なるほど、確かに経緯はその通りかもしれないが、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏によれば、

「森さんは、W杯開催に当たり“8万人規模のスタジアムで”と世界に約束していた。しかし、『ラグビー後進国』の日本で、ラグビーのためにそれほどのスタジアムを建設するのは現実的ではない。そのため、森さんは、オリンピックの東京招致運動を起こしてメインスタジアムを作らせ、ここにラグビーW杯を滑り込ませようとしたのです」

 というから、どっちもどっち。お互いを利用し合った結果が、今の惨状を招いたとも言えるのだ。

 とまれ、ラグビーW杯は「新国立」抜きが確定。

 先の貴島副会長は、「こうなった以上、とにかく良いW杯を行うよう、全力を注ぎたい」と言うけれど、法螺と二枚舌に翻弄されたW杯がどの方向に転がっていくかは、その楕円のボール同様、予測不能なのである。

「特集 新聞は報じなかった白紙撤回の水面下! 法螺と二枚舌の『新国立競技場』」より

週刊新潮 2015年7月30日号掲載

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