「ドクター秋津」のがんになるのはどっち? 人生はすなわち二者択一の積み重ね!――秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)

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■がんになりやすい「食」とは?

 次は食生活に関する質問に移りましよう。

【Q2 「アジの干物」と「苺のショートケーキ」、がんを誘発するのはどっち?】

 DHAなどが豊富な魚は、動物性タンパク質の中では健康食品の代表です。対して、ケーキは高カロリーが肥満の原因になる。答えは明らかだと思うでしょうが、実はがん予防という観点では干物の方がリスクは高い。

 ポイントは“塩”です。塩の刺激というのは非常に強烈で、細胞を傷つけてしまう。そんな“刺激物”を毎日大量に胃の中に入れていれば、胃壁が荒れる。この修復の過程で、がん細胞が生まれる可能性が高まる。

 一方、ケーキなどの糖分が、がん予防で問題になるケースは少ないでしょう。もっとも、摂りすぎは禁物。砂糖は体内のカルシウムを減少させてしまう。カルシウムには胃がん、大腸がんの抑制効果があるといわれています。塩蔵魚介類ほどリスクは高くありませんが、やはり糖分もほどほどに。

【Q3 「焦げた焼き魚」と「ミディアム・レアの牛ステーキ」、がんを引き起こすのはどっち?】

「魚の焦げを食べると、がんになる」――。一時よく注意喚起されたものです。魚の焦げた部分に「ヘテロサイクリックアミン」という発がん性物質が含まれているのは事実です。しかしながら、日常生活で口にする程度の量であれば、心配する必要はありません。

 この問いの正解は、「牛ステーキ」になります。肉中心の食生活は大腸がんのリスクを高める。肉を消化する際、腸内環境が悪化してしまうのが原因です。

 世界で牛肉を最も消費する国はアメリカです。ならば、アメリカ人の多くが大腸がんになるかといえば、そんなことはありません。実は日本人とアメリカ人の腸内細菌は異なることが分かってきました。アメリカ人は、牛肉などの動物性の肉や脂肪を消化するのが得意な腸内細菌を持っている。それに対し、日本人の腸内細菌は米と魚系統に特化しており、肉や脂肪の分解は苦手なのです。

 さらに肉ばかり食べていると、腸内で「クロストリディウム」という悪玉菌が増えます。このクロストリディウムの作る物質に発がん性があると言われています。それでも肉が大好きで食べずにはいられないという方は、食後に腸内環境を整えるヨーグルトを摂るようにしましよう。

【Q4 「ワインをグラス3杯」と「ウィスキーのダブルを1杯」、がんになるのはどっち?】

 私も左党。仕事が終わってからの晩酌を何よりの楽しみにしています。しかし、飲酒にも、4種類の発がんのリスクが潜んでいる。

(1)アルコール度数40度以上の蒸留酒(ウォッカやテキーラなど)をそのままガブガブ、急ピッチで飲む人は、首から上の消化管の粘膜を荒らし、口腔・舌・咽頭・食道のがんリスクが高まる

(2)大量飲酒の人はアルコール性肝炎から肝硬変、そして肝臓がんへの悪化を招く危険性がある

(3)アルコール性すい炎を患う人は、すい臓がんのリスクを高める可能性がある

(4)飲酒は大腸がんのリスクも高める。アルコールが分解されると、アセトアルデヒドとなる。これが分解される際に出る活性酸素で、腸内細胞のDNAを作るのに必要な葉酸が壊され、DNAの修復がうまくいかず、大腸がんになりやすくなる

 一方、酒はよく“百薬の長”とも言われます。確かに1日15ミリリットル程度以下のアルコール(日本酒なら、0・5合)を飲む人は、全く飲まない人に比べ、がんの死亡率や全死亡率が下がるというデータもあります。

 もっとも、酒飲みには、0・5合というのは、ちと辛いはず。医学的に許容できる酒量は、日本酒1合。ビールなら大瓶1本、ワインでグラス2杯、ウィスキーではダブル1杯が大体の目安ですから、その範囲内に収めるように努めましょう。

 つまり、Q4の答えはアルコール度数ではなく、酒量が問題。「ワインをグラス3杯」の方が発がんリスクは高まるということです。

 国立がん研究センターの調査では、1日のアルコール摂取量が日本酒で平均1合以上2合未満の男性は、飲酒しない人に比べ、大腸がんの発生率が1・4倍、2合以上飲む人に至っては、2・1倍だった。

 ちなみに私はワイン党で、毎晩、赤ワインをフルボトルの半分ほど楽しんでいます。これで酒量はグラス2杯となる。ハーフボトルはグラス換算では3杯のはずだ? 我が家のワイングラスはとても大きいので2杯に収まるのです……。

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