それでもギリシャが世界一“オナシスの末裔たち”
政府にゃ返すお金がナイ、輸出産業がほとんどナイ、古代文明の遺跡ぐらいしかナイ……とナイナイづくしのギリシャだが、世界一を誇れるものがひとつある。それは、海運業だ。
UNCTAD(国連貿易開発会議)の集計によれば、ギリシャ人が実質的なオーナーの船舶保有量は積載量ベースで約2億8300万トンで、約2億3600万トンの日本を抑えて世界トップなのである。
「ギリシャの海運業は、荷物を運んで運賃を徴収したり、世界各国の海運会社と用船契約をして船を貸しだす船主業だったり、中古船舶の売買などがメインです」(日本海事センターの佐藤量介・専門調査員)
ギリシャの海運といえば、“20世紀最大の海運王”と呼ばれた、アリストテレス・オナシスを思い出す。オナシスは第二次大戦後、アメリカが兵器等の武装運搬用に大量建造した戦時輸送船(リバティ船)の余剰船舶を安値で購入して海運業に進出。折からのヨーロッパ復興の風に乗り、巨万の富を築いた。オペラ歌手マリア・カラスと浮名を流し、ジャクリーン・ケネディを娶(めと)ったのも、財力あればこそ、だった。その末裔ともいえる人々が、今のギリシャ海運界を支えているのである。
「同族経営で、保有隻数は数隻というのが多い」(同)
とはいえ、中には50隻以上を持ち、ニューヨーク市場に上場しているクスタスやエコノム、ツァコスといった巨大船主も存在しているのだ。
こんな“世界一”があるのに、なぜギリシャは財政危機に陥った?
「実はギリシャの外航海運業者は、憲法によって免税や税制優遇措置を受けているのです」(同)
海運でいかに稼ごうとも、税金は政府に入ってこない。
「財政危機以降、政府は優遇廃止を検討しましたが、資産フライトと、20万人ともいわれる雇用を失うことをおそれ、結局うやむやになっています」(同)
そうそう、もうひとつ世界一がありました。なんと年間のセックス回数!――これもオナシスばり。