ドラマ『僕らプレイボーイズ 熟年探偵社』出演 石田純一×角野卓造×高橋克実×笹野高史「中高年の悩みは任せろ!」爆笑座談会

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 7月17日、テレビ東京・金曜夜8時のドラマ『僕らプレイボーイズ 熟年探偵社』がスタートした。主演の高橋克実ほか探偵4人の実年齢の平均は62歳。まさにドラマ原案「還暦探偵」さながらの4人が、撮影現場の裏側、中高年の生活と意見を、爆笑のうちに語り合った!

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 7月某日、歌舞伎町ロケから座談会に駆け付けた高橋克実(54)、石田純一(61)、笹野高史(67)、角野卓造(66)の4人組。熟年離婚やリストラ、ペットロスなどなど「中高年」のお悩みを、同じく熟年の探偵たちが“明るく”解決していくというドラマだけに、撮影中も熟年パワーに満ちた、笑いの絶えない現場のようで……。

高橋:梅雨時ですけれど、ドラマの現場は爽やかでカラッとしてますね。スタートは割と朝早いんですが、年齢的にも夜のロケより朝のほうがエンジンのかかりも良い。まさに「中高年」ならではの現場ですよ。

笹野:いやいや、朝早いのは、(午後の帯番組のMCをやっている)この人のスケジュールのせいです。

高橋:すいません。早速、墓穴を掘りました(笑)。とにかく、ここまでの和気藹々ぶりはない、というくらい明るい現場です。

角野:みんな、長年俳優をやってるから、ゲストの女優さんも知り合いが多いんですよ。だから、芝居の前に「最近、どう?」なんて近況報告が始まって、事件の相談に来た設定なのに、場がすっかり和んでしまう。

高橋:とにかく、笹野さんが現場の雰囲気づくりのリーダーですよね。

石田:角野さんや笹野さんの、台詞の合間に入れるアドリブが実にいいんです。今日もキャバクラに潜入調査するシーンを撮ったんだけど、料金が高いから僕ひとりが入店する設定。「ああ、いい匂い」とか言いながら店に入っていくんだけど、後ろから笹野さんが「どんな匂い?」「シクラメンか?」なんて、可愛くチャチャを入れてくる。

高橋:あまりに自然にアドリブを繰り出すので、監督が「今のはトラブルですか、アドリブですか?」と確認していたくらいですから。

石田:第1話に、尾行中の角野さんが高橋さんにぶつかってよろけるシーンがある。そこで俺が、高橋さんに「(あちらは心配しなくとも)大丈夫。最近、足腰が(弱ってるだけだから)」とアドリブをかましたんですが、次の瞬間、自分が本当に躓(つまず)いてよろけてしまった。オンエアで聞き取れるかどうかわからないけど、角野さんに「足腰弱ってるのはそっちだろう」と返されてしまいました。

高橋:アドリブのアイディアは、笹野さんが出してくることが多いですよね。

笹野:劇団(以前所属していた自由劇場)で、そういう“無駄撃ち”を数限りなくしてきたからね。無駄撃ちをすればするほど面白くなる。アイディアを出しても、演出家が採用してくれるのは、100のうちせいぜい2つか3つ。でも、無駄撃ちをしているうちに“正解の演技”が見えることもある。

角野:この座談会では無駄撃ちしてないね。完璧な、的確な言葉で語ってるよ。早く終わらせようとしてるでしょ?(笑)

笹野:撮影が朝早いもんだから、ついニュースを観そびれるでしょう。でも、情報番組をやっている高橋さんに聞くと、だいたい世の中の様子は分かるんですよ。

石田:それは、現場の楽しみの一つですね。

笹野:昨日起きた事で、現場の高橋さんの上機嫌・不機嫌が決まるんです。なでしこジャパンが準決勝で勝った翌日の撮影なんて、もう上機嫌。世界で何が起きているかで、ドラマの雰囲気が変わってきちゃう(笑)。

高橋:いやいや、これだけのベテランの先輩方がまわりにいらっしゃるんで、僕は乗っかるだけですよ。

■「燻し銀」で三十余年!

角野:僕らが若い頃は50代で老人、60代は仙人のように感じていた。でも、今の60代はスニーカーとか履いて、自由気儘に遊び歩いている感じ。経済的には困っていたりするのかもしれないけど、「おじいさん」という感じはしないね。

笹野:俺は若い頃、50になったら死ぬ、と豪語してた。あんな年寄りになったら、やってられねえ、と。

石田:笹野さんとは32年前に『タンジー』というミュージカルでご一緒しているんですけど、その頃から全く変わらないですよね。「華やかな燻し銀」という感じで。

高橋:32年前から「燻し銀」だったんですか(笑)。

笹野:23で芝居始めたんだけど、いきなりシェイクスピアのリチャードのおばあさんをやらされた。以来、おじいさん、おばあさんは、僕の持ち役だったね。

角野:それは、芝居がうまかったからだよ。

笹野:23ですよ? 俺は、(老け役で有名な女優)北林谷栄か! いまだに、おじいさん役ばかりですよ。

角野:だって、今は本当におじいさんだもの(爆笑)。

笹野:そういう役に飽き飽きして、「たまには二枚目をやらせてくれ」と、『マクベス』のバンクォーという役をやらせてもらったの。当時は髪の毛もあったから、床屋で風に靡(なび)くようなカッコいい髪型にしてもらったんだけど……。つまんなかったなあ、二枚目は(笑)。やっぱり、悪役とか脇のほうが面白いね。

角野:俺らは確かにそうだけど、ここは(トレンディドラマで多くの二枚目役を演じた)石田さんにちょっと聞いてみないと。

石田:俺は、変則二枚目なんです。同じ世代だと名高達男さん、山下真司さん、神田正輝さんなんかが正統派の二枚目。俺はあそこまで顔は良くないから、ちょっとひねりが必要なんです。だから、トレンディドラマの時から、「壁ドン」みたいなことをやってましたよ。

角野:それが、似合うか似合わないかが問題なんだよ。

高橋:今の純一さんのカーディガンの着方だって、俺がやったらコントですよ。バブル期のTVプロデューサーを茶化したコント。

笹野:私たち脇役は、実は二枚目をどこかしらバカにしているんですよ。「二枚目なんてよお、立ってりゃいいんだろう? 立ってりゃ、絵になるからさ」と(笑)。そう言って鬱憤を晴らしていたわけさ。角野さんなんかは若い頃から成功しているけど、僕はようやく今がピークだからね。(同世代の)佐藤B作も柄本明も、若い頃にピークが来てるんだけど、この世界で僕はやっと今、一人前になった。

高橋:でも、笹野さんの姿は『男はつらいよ』で、俺、昔から見てますよ。あの映画に出てるって、すごいことですよ。

笹野:憧れてはいたよ。『男はつらいよ』にいつになったら出られるかと。一番最初に出やがったのが柄本で、その次にB作が出た。口惜しゅうございましたよ。

角野:ゴメンな、俺、一回も出てないよ。あのシリーズに出ただけで、胸に大きな勲章が付いてるよ。

笹野:真面目な話、俳優としてのピークは、この4~5年だと思ってるんです。

高橋:バラエティとかCMまで出てますもんね。

笹野:違うよ、そういう意味じゃないよ。(筋肉ムキムキのボディビルダーに扮した)KINCHOのCMも8月に終わっちゃうし(笑)。でも、50を過ぎた頃から、それまでとは違った「役者の世界」が広がってきて面白かったね。以前は何かに雁字搦めにされていたのが、段々解けてきて、ああ芝居ってこういうことか、とわかってくる。だから、50で死ぬのはやめました。

高橋:僕も、50過ぎて昼の帯番組を持つとは思っていなかったんですが、やってみるといろいろな発見がありますね。でも、こうやって、先輩方が喋っているのを聞いているだけで、演劇学校にいるみたいです。これに、先日の撮影中に78歳の誕生日を迎えた伊東四朗さん(探偵社の所長役)が加わった日には、我々4人が生徒になって、昔の浅草・フランス座はどうだった、エノケンさんはこうだったとか……。空き時間も楽しい現場ですね。

笹野:最近は自分を抑圧するものから自由になって、つまり我慢するのをやめて課金式のゲームにはまっている僕だけど(笑)、自分を戒める力を培わないと「良い老人」にはなれないと思ってね。お尻の穴を、もう一回キューッと締めていかなければと思っているところです。最近は老人の犯罪も多い。ちょっとしたことで、あんな犯罪を起こしてしまうわけだから。

角野:うーーーん?

笹野:そういう風には見えない?

角野:うん!(爆笑)

■ウルマンの詩のごとく

石田:マッカーサー元帥が座右の銘にしていたというサミュエル・ウルマンの詩に「青春とは、人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ」という一節がある。理想を失った時に人は老いるのであって、優れた創造力、逞しい意志、炎(も)ゆる情熱といったものを持っている限り、人は若いんです。だから俺は、中高年という言葉には一応乗っかりますが、内面的には年は関係ないと思いますよ。

笹野:すごいね、ワインが似合う、女の子も口説けちゃいそうな言葉だね(笑)。

角野:今の話と被るかもしれないけど、僕らの青春時代にはアイビールックが流行った。その代表的なブランド・VANの紙袋にあったのが、「for the young and young-at-heart」というモットーだった。若い人のために、そして若い心を持った人のために。心に残っている言葉だね。

石田:石津謙介。

角野:そう、石津謙介。でも、VANの話とは逆になってしまうけど、今の僕はほぼ諦めの境地だね(笑)。無理にいろんな意欲をかきたてることは、もうしない。やめるものはやめる。残りの時間を数えると、おそらく俺の部屋の本は読み切れない。5台のブルーレイレコーダーで「健康」「歴史」「居酒屋」とジャンル別に番組を録画してるけど、これも死ぬまでに見きれない。諦めるしかないんだ。

笹野:達観してるね。僕なんかより20くらいは年上の人生観だ。

石田:でも、共感できる話ですよね。俺がさっきみたいな話をすると、反感を買うだけだけど(笑)。

角野:諦めていると言っても、人生を無理に縮小するつもりもない。どちらかと言えば元気なままで、ぽっくり死にたいという思いはあるね。うちの親父は脳梗塞で10年間少しずつ衰弱して亡くなった。叶うことなら、ある日突然、ぽっくりと逝きたいね。

高橋:撮影前の顔合わせの時から、このメンバーが集まると、いつも健康の話、病気の話ですよ。自分が54で一番年下なんですけど、非常に参考になります(笑)。

笹野:みんな詳しいですよ、検査の内容とか。どこの病院が良いとか。

高橋:第1話にゲスト出演した田中美佐子さんが定期検査をしていないと言うので、皆で寄ってたかって「検査したほうがいい」と勧めてましたよね(笑)。やっぱり俳優は個人商店みたいなもので、身体が動かなくなるというのが一番怖いですから。

石田:僕は本を読むのが好きなんで、目は気をつけたいよね。まだ老眼鏡のお世話にはなっていなくて、裸眼で新潮文庫だって読めますよ。ところが、58の時に朝の情報番組に出てその話をしたら、「嘘です」「そんなわけがない!」と眼科医さんとかから抗議FAXが殺到した。たまたま、慶應病院のアンチエイジングの専門家がいらっしゃって、同じ58歳だけどシニアグラス必要ないですよ、とフォローしてくれたので助かったけど。

角野:僕は検査好きで、いろいろやっているんだけど、目も大事だと思って3年ほど前から近所の眼科医で年1回、眼底出血、白内障、緑内障とか検査しているんです。脳や首から下の内視鏡検査や超音波検査はするけど……。

高橋:目とか耳は、なかなかやらないですからね。

角野:あとは、俺たち舞台もやるから、喉、声帯まわりね。やはり定期的に検査した方がいいよね。

■若き妻たちの「準備」

角野:僕の家内は昭和22年生まれで、この中では一番年上ですね。今は元気だからいいけど、これから先、どちらかが不自由になったら助け合って生きていかなければならないと思うんですよね。だから、料理学校にでも行こうかと、まじめに考えてるんです。だって、食べるというのは一番基本的なことだからね。もちろん、俺が先に逝ってしまえば、何も問題がないんだけど。若い奥様をお持ちのご両人は?

笹野:うちは、ヘルパーの資格を取って、寝たきりの人をどうやってお風呂に入れるかとか勉強して、僕がヨボヨボになる準備が万端整っております。えげつない話だなあ(笑)。

石田:いや、うちなんか、もっとえげつない。とにかく生命保険ですね。生きている間の備えじゃなくて、死んだ後の備え(笑)。

笹野:あまりに生々しいから言わなかったんだけど、うちもそうだよ。俺がある日、仕事が早く終わって帰宅してみると、見知らぬ女性と家内が書類をみながら、何やら真剣に話している。その人がそそくさと帰った後で、「何だったの?」と聞いたら、「うん。……生命保険屋さん」と。でも、30代でこれをやられたら嫌かもしれないけど、今や、そういう準備しておいてもらったほうが安心ですよ。

角野:そういえば、第1話のゲストで来た金田(明夫)君は、「お墓を買った」と言ってたなあ。緑山スタジオの近くに。安かったと言ってたね。

笹野:それをバカにするかと思ったら、みんなで「詳しく聞かせて」って。

高橋:ロケバスの中で、ずーっと、墓石の種類や形の話をしてましたね。

角野:お寺さんが実質経営しているけど、檀家じゃなくても、その宗派じゃなくても入れるところが増えているらしいね。

笹野:僕はだいぶ前から、パソコンで遺言を書いている。「母さんを頼む」とか子供たちへのメッセージも箇条書きで書いているんだけど、時間が経つと状況も変わるよね。こまめに更新しなくちゃいけないから、結構大変。あまり早い準備もどうかな。……って、何か変な話になってきたけど、これ、どうやって番宣につなげたらいいの?

石田:いやいや、そんな中高年の「お悩み」の解決法が、なんとこのドラマで観られるんです。このドラマを観れば、リストラも介護も怖くない!

高橋:このドラマを観れば、あなたも検査に行きたくなる!

笹野:いや、まとまりのない話ですみません。

角野:いつもと一緒じゃねーか(笑)。

週刊新潮 2015年7月23日号掲載

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