JAXAの月面着陸計画に黄信号を灯す「宇宙政策担当大臣」

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「我々は月へ行くことを選んだ」。東西冷戦真っ只中の1961年にケネディ大統領が『アポロ計画』を打ち出してから半世紀。ようやく日本も月面探査に乗り出すことになった。政府が月面着陸計画を承認したことで関係者の士気は高まる一方だが、旗振り役のはずの「宇宙政策担当大臣」が黄信号を灯しているという。

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 米国、ロシア、中国が宇宙空間でも“覇権”を競う時代。舞台は地球から約38万キロの距離を周回する月である。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係者が言う。

「2007年に打ち上げた月探査衛星『かぐや』を使った調査により、月の南極部分には537時間連続で陽が当たる場所があることが分かりました。各国はこの日向の確保に向けて必死に取り組んでいるのです」

 正式には『高日照率領域』と呼ばれるそうだが、

「現在稼働中の国際宇宙ステーションは、遅くとも24年に運用が終了する見込み。米国やロシア、欧州など参加国は将来的にこれに代わる有人基地を月に建設したいと考えています。月での基地建設に向けた調査では太陽電池を使用した探査機が使われます。つまり、高日照率領域は探査機のエネルギー供給基地に最適で、ここを押さえれば他国より大きなアドバンテージを得ることができるわけです」

 月の表面積は約3796万平方キロで、アフリカ大陸とオーストラリア大陸を合わせた広さとほぼ同じ。それに対して『高日照率領域』の面積は約1万平方メートルと野球のグラウンドを一回り小さくした程度の広さ。その希少さが分かるだろう。

 日本はここへの着陸に、デジタルカメラでおなじみの『顔認識システム』を世界で初めて応用する予定。探査機にこの場所の“表情”を記憶させて、ピンポイントで降り立つ計画だ。

 各国が威信をかけて取り組む“場所取り競争”だが、日本の予算は僅か150億円。最低でも400億~500億円とされる米・ロ・中と較べて3分の1以下の規模に留まっている。その理由として関係者が口を揃えるのは、宇宙政策を担当する山口俊一内閣府特命担当大臣(65)の無関心である。

■根っからの総務族

 JAXAで別の衛星プロジェクトに参加する、大阪大学の佐伯和人准教授(惑星地質学)が指摘する。

「日本の宇宙政策は、内閣府宇宙開発戦略本部が作成した宇宙基本計画工程表に基づいています。北朝鮮のミサイルを監視したり、被災地の画像を撮影する情報収集衛星には、ここ10年だけで6260億円もの予算が組まれています。これは大型の探査機を毎年1機、月や火星や金星に打ち上げられる額です。内閣府や山口大臣は安全保障政策に傾注していますが、国際共同宇宙開発による平和秩序の構築や、100年後の国益につながるような宇宙探査には関心を示しません」

 槍玉に挙げられている、山口大臣とはどんな人物か。

「第1次と第2次小泉内閣で総務副大臣を務めた根っからの総務族です。地方の過疎化対策には熱心に取り組んできましたが、宇宙への興味など皆無でしょう。当選9回でようやく大臣に就任したのも、盟友の麻生太郎財務相が安倍総理に頼んでねじ込んだと専らの噂です」(政治部デスク)

 ご本人に宇宙政策への興味の有無を尋ねると、

「多忙で対応できない」

 黄信号が赤信号に変わらぬことを願うばかりだ。

「ワイド特集 雨降って地固まらず」より

週刊新潮 2015年7月9日号 掲載

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