「安保法案」ドタバタ国会通過までの有力シナリオ

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 政治日程を握ることの強みを安倍総理はよく知っている。事実、これまでもスケジュールを巧みに操ることで国会運営を有利に進めてきた。だが、若手議員の舌禍問題で紛糾するなど法案審議はなかなか進まない。ドタバタ国会を制する奥の手とは。

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「これで、安倍総理はいよいよ“宝刀”を抜く準備に入りましたね」

 とは政治部デスクの弁である。6月22日、衆院は戦後最長という95日間の会期延長を決めた。

「安保法案について、与党は衆院で八十数時間の審議を予定しています。法案を審議する特別委員会は週3回開かれていますが、会期末になっても、当初の予定の60時間に達していない。国会に呼ばれた憲法学者が揃って“違憲”を主張するなど、予想外の事態が続いたのも痛かった」(同)

 大幅な会期延長が決められたのはそんな事情からだが、一息ついている余裕はない。

「このまま審議を重ねていけば、公聴会を経て7月17日ごろには衆院本会議で可決ということになります。しかし、安保法案に真っ向から反対している民主党や共産党は、本会議を欠席する可能性が高い。自民・公明による与党単独の強行採決になるわけです」(同)

 衆院で可決されると法案は即日、参院に送られる。だが、ここでもさらなる紛糾が必至だ。

「参院では六十数時間の審議が必要とみられています。しかし、民主党は強行採決を理由に特別委員会の委員長を決めない、委員を出さないなどの手で引き延ばしに入るはず。再び強行採決することも理屈では可能ですが、それをやったら支持率暴落は免れません」(同)

 NNNの調査によると、6月半ばの内閣支持率は41・1%。「不支持」と拮抗しており“危険水域”目前だ。

「安倍政権としては、維新を取り込んで採決に出てもらえば与野党出席での採決というアリバイが出来る。しかし、松野頼久代表が法案に反対しており、どうなるか分からない。そこで、審議が膠着したままでも法案が機械的に成立する“60日ルール”を使いたくてたまらないはず」(同)

 憲法59条には、参院で60日以内に採決されない場合、衆院の3分の2以上の賛成で法案は成立するとある。与党では今のところ、「60日ルール」を封印しているが、これなら9月半ばの成立も可能だ。何しろ、延長しても日程はギリギリなのである。

 中堅の自民党代議士が言うのだ。

「正直、あと1回、国会が止まるトラブルが起きたら本当にどうなってしまうのか分かりません」

「バカ議員」がまだいることを想定しての「60日ルール」というわけである。

「特集 うぬぼれ『自民党』の構造欠陥」より

週刊新潮 2015年7月9日号 掲載

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