混沌の地パレスチナにも手を出す「イスラム国」

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 いったいどれだけ敵を作れば気がすむのか。

 6月30日、過激派組織「イスラム国」が、今度はイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルに「絶滅させる」とケンカを売った。

 今年1月の人質殺害事件で日本に対しても「悪夢の始まりだ」と“敵”宣言を行ったのは記憶に新しいが、シリアでアサド政権、反政府勢力と戦い、イラクで政府軍とシーア派民兵、クルド部隊と戦火を交え、米軍を中心とする有志連合軍を敵としながら、まだ相手に不足と見える。

 しかも、今回ケンカを売られた両者の仲は、

「ハマスといえば、パレスチナの対イスラエル強硬派。テロも辞さない武装闘争路線の末、パレスチナ自治政府に政権参加、現在はガザ地区を実効支配するスンニ派組織です。一方のイスラエルはハマス歴代指導者や幹部を次々に暗殺・殺害、血で血を洗う争いを繰り広げた仇敵」(国際部記者)

 という間柄。しかも、

「昨年7月にイスラエルは、国際的非難を浴びながらもガザ地区で軍事作戦を全面的に展開。50日間で撤退したものの、同地区を徹底的に封鎖しました」(同)

 イスラエル軍は6月29日にはスウェーデン船籍の支援船すら拿捕。物資欠乏の中、ガザ地区の市民生活は困窮を極めているという。

「『イスラム国』の“絶滅宣言”の狙いはガザ地区の不満分子取り込みでしょう」

 とは、現代イスラム研究センターの宮田律氏。

「中東全体に混乱を広げたい、という意図ももちろんあるはずです。が、かつて“反イスラエル”の旗頭だったハマスは現在、政権運営を担う以上、闇雲な闘争路線は取れない。一方、ガザ地区の人々の“イスラエル憎し”の念はただならぬもの。そのギャップに目をつけたのでは」

 苦しむ人々の不満を吸い上げ、末はイスラム世界における反イスラエル、反米の盟主を目論んでいるというのだ。

「現に、反イスラエル系の過激派組織でも『イスラム国』の“ブランド化”が始まっています。7月3日、エジプト・シナイ半島からイスラエルに向けてロケット弾を撃ち込んだ組織は『イスラム国シナイ州』を名乗っています」(同)

 憎悪の連鎖が「イスラム国」を拡大させるのだ。

週刊新潮 2015年7月16日号 掲載

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