2年後にお金が増えているのはどっち? 「純金」か「ドル預金」か タワマン低層か23区内の狭小一戸建てか……
▼毎月1万円で積み立てるべきは「純金」か「ドル預金」か
▼5000万円でタワマン低層か23区内の狭小一戸建てか
▼ハイリスク承知の投資なら「南アフリカ」か「ブラジル」か
***
思えばアベノミクス前夜、今のような株高円安をピタリと予想できた人はどれだけいるだろうか。資産運用とは未来を予測することでもある。そして、利益を稼ぎ出す人は、なぜそうなるのかを知っている。マネーの専門家に2年後に儲かる運用先を選んでもらった。
***
「卵をひとつのカゴに盛ってはいけない」
投資の格言にあるとおり、分散投資は資産保全の基本である。その、分散投資の代表ともいえる「純金投資」と「ドル預金」は、日本でもすっかり定着してきたが、この2つの金融商品は、えてして正反対の値動きをすることをご存じだろうか。すなわち、ドルが強いと金は売られ、金が急騰しているときは、ドルに元気がない。そして、円安ドル高に動いている現在、金価格は5年ぶりの安値という水準にある。
経済アナリストの豊島逸夫氏が言う。
「平時であればドル預金は安定して利息を生んでくれます。また、2011年に円は1ドル76円の高値をつけましたが、今は4割も目減りしている。ドル預金は金利も高めで円安リスクのヘッジにもなるのです。一方で、金というものは利息を生まない代わりに、経済危機の際にはマネーの逃避先になる。リーマン・ショックの時は株や債券が暴落した代わりに金の価格は4倍に値上がりしました。平時と有事で、それぞれにリスクヘッジの役割が分かれているのです」
これから、平時がしばらく続くのか、またもや有事がやってくるのか、それが「純金」と「ドル」の価値を決めるというわけだ。そこで、毎月1万円ずつ投資するとしたら、2年後にどっちが儲かっているのだろうか。
まず、金。毎月決まった額を投資する場合は「田中貴金属工業」などが扱っている現物の純金積立投資や、株のように金のETFを買うという方法もある。気になるのは、先にも述べたように、金価格は下落傾向にあることだ。
だが、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が言う。
「今年に入って金価格は1オンス1250ドルから1150ドルを行ったり来たりしており、これを下回ることはないと見られています。それというのも鉱山会社が金を産出するためのコストが1オンス1150ドルと言われているため、これを下回ると鉱山会社は金の産出を止めてしまう。すると、市場に出回る金が減り、再び金の価格が戻るというわけです」
ということは、今が金価格の底値にあるというわけだが、
「突発的な大事件があれば、金はまた急騰します。あえて挙げるとすれば、中国の株価が大暴落するとか、中国が領有を進めている南沙諸島で大規模な軍事衝突が起きたりするケースでしょうか」(同)
一方、ドル預金はどうか。ドル預金は銀行の窓口やネットバンクで預け入れが可能だが、毎月積立をするのなら「外貨建てMMF」という金融商品を購入したほうがやりやすい。
「アメリカはすでに金融緩和を止めてドル通貨の回収をする時期にあります。一方で、日本はバラ撒き政策をやめずに、追加緩和もあるとしている。しかも、米国ではこれからFRBによる数度の利上げが予想されており、一層の円安ドル高になることは間違いありません」(前出の豊島氏)
また、ドルの金利上昇は、利息がつかない金にとってマイナスの材料にもなるという。
「3、4年後は分かりませんが、2年先ならドル預金は金利も為替差益も得られやすい。今からやるのなら、ドル預金のほうがいいと思います」(前出の深野氏)
ドル預金に軍配を上げてよさそうだ。
■リセールバリュー
ある程度お金が出来たら、欲しくなるのがマイホームだ。狭いながらも一戸建てか、はたまた眺望が最高のタワーマンションを思い切って買うべきなのか。
頭金と住宅ローンを合わせて5000万円以内の物件が買えるとしよう。不動産会社の検索サイトで探してみると、東京23区内では8000件近くの新築・中古一戸建てがヒットする。さすがに都心には数えるほどしかないが、山手線の外側や下町まで広げると、こんなに選べるのかと驚くほどだ。
一戸建ての良さはいわずもがなである。
「23区内の一戸建ては周辺に古くからの商店街が多く、買い物に不自由しません。最近の大型マンションは工場跡地などに建てられることが多く、近隣にはコンビニかファミレスしかなかったりする。家の外観やインテリアを自分好みに変えられることもマンションにはない利点です。階下に音が響いても気にしなくて良いので、少しぐらいなら子供が飛び跳ねても大丈夫。子供が2人以上いる家族は一戸建てを選ぶのがいいと思います」(明海大学不動産学部の森島義博客員教授)
もちろん、難点もある。
住宅評論家の櫻井幸雄氏によると、
「23区で5000万円までの一戸建てを探そうとすると、山手線の外側エリアでさえ、駅から15分以上歩いたり、バスを使わなければならない物件ばかり。それでも、頑張って駅近の物件を見つけたとしても、今度は3階建ての狭小住宅になってしまう。こうした住宅は、水回りの関係上、1階に風呂を設置してあるケースが見られ、2階がリビング、3階が寝室という間取りになっていることが多いのです」
若いうちはいいけれど、高齢になってから3階を上ったり下りたりするのは大変だ。
一方、タワーマンションはどうだろう。
現在、東京23区には、約350棟のタワーマンションがあり、さらに24棟の新築物件が売りに出されている。ご存じのように高層マンションは中国人など外国人の“爆買い”のターゲットになっており、山手線の内側だと2LDKでも「億ション」が当たり前だ。
それでも、最近は私鉄沿線や下町にも高層マンションが建っており、中低層階なら5000万円以下でも手が届く物件がある。もちろん、広さも2LDKと、家族で住んでも狭すぎることはない。
「何よりもタワーマンションが優れている“三大要素”として日照、眺望、風通しが良い事があげられます。たとえ、低層階の部屋であっても、敷地を広く取っているから、すぐ目の前が隣のマンションのベランダということはない。また、エントランスや豪華なロビーといった共用部分の広さはやはりいいものです。さらに、低層マンションと比べて総戸数が多いため修繕積立金に余裕がある。管理費が割安なところもあります」(前出の森島氏)
デメリットと言えば、ベランダに布団などが干せなかったり、エレベーターの設置数が少ないと上り下りに時間がかかることか。それでも、2年後を考えれば、
「タワーマンションのほうが圧倒的に有利」
とは前出の櫻井氏だ。決め手は、売却する際の「リセールバリュー」だという。
「タワーマンションは駅近の物件が多く、利便性が高い。こうした物件は外国人だけでなく地方の富裕層からも需要が高いのです」
すぐ売れる、値下がりしにくいというのが特徴だ。一方、一戸建ては少子化の影響で、むしろファミリーから見放される傾向にある。換金のし易さもあって、タワマンの勝ちだ。
■止まらないインフレ
定期預金の金利が1%もないというご時世にあって5%、6%と聞けばつい手が出そうになる。
だが、これ、南アフリカの通貨「ランド」やブラジルの通貨「レアル」の外貨預金の金利である。最近はネットバンクなどから簡単に外貨預金をすることが出来るし、投資信託もある。だが、金利が高いぶんだけ「落とし穴」もある。
南アフリカ ランド5・40%(1年定期)。
ブラジル レアル6%(3カ月定期)。
どちらもネットバンクで預けた場合の金利だが、注意しなくてはならないのは、「カントリーリスク」だ。激しいインフレや財政破綻に陥ってしまえば、預けた資金そのものを失ってしまいかねない。
そこでまず南アフリカ。国際フィナンシャルコンサルタントの荒川雄一氏が言う。
「南アフリカ共和国は北アフリカのようなテロや西アフリカでのエボラ出血熱といった危険要素がありません。また、イスラム教徒もいますが、大半はアジア系で穏健です。歴史的に見れば、イギリスの植民地だったこともあり、経済システムや社会秩序もアフリカの中では整っている。また、ケープタウンは欧州の人々の別荘地になっており中国からの投資も盛んです」
南アフリカはダイヤモンドの産出で知られているが、国際価格が安定していることから資源安の影響も比較的小さいと言われている。昨年の経済成長率は2%と低めだが、インフレ率も4%台に落ち着いている。
一方、ブラジルは人口2億人の大国。「BRICS」の代表的な国として知られ、近い将来、日本のGDPに追い付くとも言われていた。石油や鉄鉱石の資源国として知られ、来年はオリンピックも控えている。だが、原油安の影響もあって今年の成長率はマイナスに落ち込んでしまった。
「オリンピック景気で現地の建設会社の株価上昇につながるかも知れませんが、それは通貨に影響するものではありません。政策金利も13・75%と魅力的に見えますが、これはインフレ(インフレ率約8%)が止まらないことの現れでもある。2年という投資期間を考えると不安な投資先です。通貨の暴落もあり得るかも知れません」(シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミスト)
同国では貧富の格差に対する不満から、最近はオリンピック反対のデモも起きている。
先の荒川氏が言うのだ。
「私は両方の国の投資信託を買っていましたが、ブラジルは成長が一段落したと見て売却しています。2年後、どちらのお金がまだ残っているか、という観点で見るのなら、まだ伸びしろがあるのは南アフリカのランド投資ですね」
もちろん、これはどっちがマシかというレベル。カジノでお金を賭けるくらいの覚悟で預金したほうがいいだろう。