純利益2兆円のトヨタ役員を麻薬密輸で逮捕した「警視庁」大騒動
東京・六本木に集う外国人ビジネスマンによる薬物乱用は、今や珍しい話ではない。が、このほど麻薬密輸の容疑で逮捕されたのは、2兆円もの純利益を誇るトヨタ自動車の現役女性幹部だった。日米を股にかける経済界のVIPを相手に警視庁が逮捕に漕ぎ着けるまでの大騒動の顛末。
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6月18日に警視庁の組織犯罪対策5課に逮捕された、トヨタ自動車のジュリー・ハンプ常務役員(55)は、慣れない留置場生活にすっかり憔悴し切っているという。担当記者によると、
「身柄は女性向けの留置場がある原宿署に置かれています。電話もパソコンも使えない生活にストレスを感じており、就寝時も電灯が消えないので不眠に悩んでいるそうです。連日、苛立って落ち着かない様子ですが、それがオキシコドンの禁断症状か否かは不明です」
成田空港の税関がハンプ氏宛ての小包から麻薬を発見したのは11日。逮捕まで1週間を要したわけだが、
「麻薬関連の捜査では、1週間は短い方です。個人の密輸でも周辺者を探るため、通常は捜査に2~3週間かかりますから。押収量がキロ単位に達するような場合は大掛かりな組織的犯罪の可能性も出てくるので更に時間が必要です。背景を根こそぎ調べ上げるので、捜査が1カ月以上に及ぶことも少なくありません」
しかし、ハンプ氏の小包から押収されたのはわずか57錠だった。
「そのため、通報を受けた捜査員らは自己使用の密輸だと感じたそうです。すぐに小包の宛て先住所のホテルにハンプ氏に関する情報の提供を求め、更に入国管理局からパスポートやビザの番号、出入国記録などの提出を受けたのです」
その結果、ハンプ氏が4月に来日したばかりのトヨタ自動車の現役役員であることが明らかになった。
「彼女は世界的企業の役員という地位にあり、年収も数億円に達するエリート。仮に麻薬の常習者だったとしても売人とは考えにくい。周辺を調べる必要性も乏しく、本来なら即日、少なくとも翌12日には身柄を拘束していてもおかしくない案件だったというのです」
■株主総会
ところが、警視庁はすぐには動かなかった。社会部デスクが後を引き取る。
「相手が相手だけに、組対5課長は組対部長と逮捕時期について協議を重ねたといいます。そして警視総監にも報告が上げられた上で、最終的に18日に逮捕することが決定された。その理由は16日にトヨタ自動車の株主総会が予定されていたから、と聞いています」
トヨタに限らず、役員が麻薬で逮捕される事態は、企業のコンプライアンスに関わる重大な問題である。
「それだけに、仮にこの日より前に現役の役員が麻薬所持で逮捕されたとなると、トヨタ自動車の株主から経営陣の責任を問う声が上がるなど、総会が紛糾して大きな混乱を招く恐れがありました。加えて株価への影響も予想されましたから、警視庁はそれらに配慮をして、16日を跨いだ18日に逮捕したというわけです」
いかな警視庁といえども、相手は純利益が2兆円に達する超巨大企業。政界への影響力を気にしたのか、或いは警視庁のOBがトヨタ本体や関連会社に天下りでもしているのか。
そこで、トヨタ自動車への配慮や天下り職員の有無を聞いたところ、
「そのような事実はありません。職員の退職後の就職については、個人のプライバシーに関することであるのでお答えしかねます」(警視庁広報課)
当のハンプ氏は容疑を否認中。保釈のメドも立たないままである。