安保法案のキーマン「松野頼久」維新の党代表が借金12億円

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 日焼けした顔に胸をはだけたシャツ、辺り構わず漂う香水の匂い。まさに見た目はホストの松野頼久・維新の党代表(54)が、安倍政権の推し進める安保法案のキーマンとして存在感を増している。しかし、実は、12億円もの借金を抱える、赤絨毯の借金王なのだという。

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 棚ぼた式に、思わぬ地位が転がり込んできたと言えなくもない。

 住民投票によって、“大阪都構想”が否決され、江田憲司代議士が維新の党の代表を辞任すると、5月19日、自動的に後継代表に据えられたのが松野氏だった。

「すでに、平沼赳夫代議士などベテラン議員は維新から抜けてしまっていましたし、残っているのは当選回数の少ない若手ばかりで、他に成り手もいなかったため、松野さんにお鉢が回ってきたに過ぎません」

 と解説するのは、政治部記者である。

「とはいえ、いまや安保法案のキーマンです。安倍政権としては、世論の反発を買いかねないので、強行採決を避けたいのが本音。そこで、与党に同調する動きを見せているのが、大阪維新の会の出身議員らです。松野さん自身も、“短期的には自民党に付いた方がベター”と周囲に漏らしている。ただ、“大阪組”以外のほとんどの維新の議員が目指しているのは野党勢力の結集。松野さんの舵取り次第では、維新の分裂を招き、野党再編も水の泡と消えてしまうかもしれないのです」

 つまり、安倍政権の推し進める安保法案だけでなく、野党再編のカギを握る人物としても、永田町で重要視される存在というわけなのである。

 しかし、松野氏が国政を左右するような立場に就いたことに懸念がないわけではない。というのも、国会議員のなかでは資産家であると同時に、知る人ぞ知る借金王でもあるからだ。

 例えば、松野氏が家族と共に暮らす住まいは、高級住宅街として知られる渋谷区松濤にある。2008年10月、そこに、地上3階地下1階の豪邸を新築したのだ。

 松野氏の知人が明かす。

「壁面に石のタイルを貼りつけ、一見すると博物館のような建物です。ガレージは、素子夫人のお気に入りのベントレーが駐車できるように、出入口が大きめに作られている。ただ、松野さんはいまはベントレーではなく、ベンツに乗っています。豪邸の地下にはカラオケルームが備え付けられ、それも素子夫人の趣味。松野さんは素子夫人のために、かなり無理をして、松濤に家を建てたと聞いています」

 永田町ではホステスと見紛うほどのド派手な格好が注目を集めたこともある素子夫人だが、松野氏は彼女に頭が上がらないと言われている。

 不動産業者によると、

「あの辺りの相場は1坪550万円で、松野さんのところは60坪ありますから土地代だけで3億3000万円。加えて、建物の建築費がだいたい1億9000万円です。締めて、5億2000万円というのが、妥当なところではないでしょうか」

 結果、住宅ローンとして、松野氏は、3億7300万円を背負うことになった。

 さらに、この豪邸以外にも、松野氏は個人資産として、父親の故・松野頼三元代議士から相続した軽井沢の別荘を所有。しかし、昨年8月、そこも銀行からの借金2000万円の担保に入れられている。

■ファミリー企業も借金

 となれば、年間どれくらいの金額を、借金返済に回さねばならなくなっているのだろうか。

 ある税理士が指摘する。

「まず、松濤の豪邸ですが、住宅ローンの標準的な変動金利1・175%で30年ローンを組んだとすると、“元利均等方式”で計算した場合、返済額は年1475万円に上ります。また、軽井沢は、家を建てるための融資ではなく、固定金利1・725%の事業ローンです。返済期間は住宅ローンより短くなるのですが、もし10年だとすると、返済額は年に217万円。松野さんは松濤と軽井沢を合わせ、金融機関におおよそ1700万円を毎年返している計算になります」

 ところが、昨年4月、国会に提出された“所得報告書”によれば、松野氏の給与所得(歳費、役員報酬など)は2285万円で、雑所得(テレビ出演料、原稿料)が89万円。合計すれば、2374万円だった。

「当然のことながら、そこから所得税や住民税、健康保険料、年金などを支払う必要がある。それらを差し引くと、ざっと見積もって、松野さんの手元には、1300万円ほどしか残りません」(同)

 これでは、手取りよりも借金の返済が400万円も上回ってしまうことになる。

 台所は火の車どころではないのだ。

 それだけではない。

 個人にとどまらず、松野氏が代表を務めるファミリー企業も多額の借金を抱えている。

 政界関係者の話。

「松野さんの母親が頼三さんの本妻でないことは、世間にもよく知られている。日陰の身だった彼女は、1950年代、父親の遺産を元手に霞が関に土地を買い、一軒家を建てました。その後、霞が関地区の開発に伴い、自宅を賃貸ビルに建て替え、息子の松野さんとともに港区南麻布に移り住んだ。あわせて、彼女は不動産管理会社を立ち上げ、かなりの収入を得るようになったのです。頼三さんにとって、彼女は単なる愛人ではなく、金ヅルでもあったのではないかと、当時、永田町では囁かれていました」

 松野氏の母親が設立したのは、『富洋』(東京・霞が関)という会社だった。現在、霞が関に9階建てのビルと南麻布に地上5階地下1階のマンション1棟、さらには、松野氏が地元・熊本で事務所を構える建物などを所有している。

 別の不動産業者が言う。

「霞が関のビルは、1坪月1万5000円前後の家賃で、テナント募集を行っていました。総面積は約600坪で、階段などの共有スペースを除くと賃貸面積は約420坪。ということは、空き室なしで、年間に約7500万円の賃貸収入を得ることができる。もう一つの南麻布の物件は、老人ホームに一棟貸しされていますが、周辺相場から推定すると、賃貸料は年5500万円ほどです」

 つまり、2つの物件からの収益は、最大1億3000万円になるという。

「ですが、富洋は自転車操業状態で金融機関からの融資が繰り返され、おおまかに見積もって、その総額は7億5000万円を超えています。返済期間を10年として、それぞれに設定された金利で計算すると、年に8600万円以上を支払わなければならない。そのうえ、霞が関のビルの規模ならば、エレベーターの点検や外壁の補修などで年に1000万円、南麻布の物件でも800万円以上はかかる。雇っている数人の従業員の給料も必要ですし、富洋はギリギリの経営状態に置かれているのは間違いありません」(同)

■“債務超過ではない”

 他にも、松野氏のファミリー企業には父親から受け継いだ冷蔵倉庫会社『東洋冷蔵』(静岡・伊東市)がある。別のファミリー企業の『松園不動産』(東京・霞が関)から伊東港近くの土地・建物を借りて操業していたのだが、ここも例外なく、2000万円の融資の担保に入れられている。

 東洋冷蔵と取引のあった水産会社の社長が言う。

「あそこには干物を置いてもらっていたんですが、今年の3月いっぱいで閉鎖されました。冷凍庫も老朽化し、海産物が傷むこともありましたけど、買い替える資金もなかったので、営業を止めることにしたのでしょう。取引業者は60社くらいあって、保管料は1社年60万円ほどだった。自前の冷凍庫を持つ水産会社が増えてきたから、業績はずっと悪化の一途だったはずです」

 ファミリー企業はどこも経営が順調とは言えないのだが、個人の分と合わせると、松野氏が抱える借金は、実に12億円に達する。

 さて、松野氏はなんと答えるか。

「松濤の自宅は、30年のローンを組んで、返済中ですが、軽井沢の分はすでに終わっています。毎年いくら支払っているか、プライベートな問題ですので、お答えできません。ただ、家内も富洋の役員として収入を得ていますし……。富洋については、賃貸収入が年間に1億5000万円くらいはあります。さらに、東洋冷蔵の売上が1億円くらいありましたから、グループで2億円、いや、2億数千万円にはなりました」

 事業拡大を図っているわけでもないのに、借金を繰り返していることについては、

「僕が17年前に、富洋を引き継いだときには、もっと借金をしていました。そこから、返したり、また借りたりしながらも、トータルで借金は減らしています。確かに、毎年の返済額は8000万円くらいになるかもしれない。でも、とにかく、決して債務超過ではない。もちろん、経営は楽ではありませんが、それはどこでも同じことではないですか。他の貸しビルオーナーにも聞いてみてくださいよ」

 不動産は水ものだと言われる。テナントが相次いで退去し、急に家賃が入らなくなることもないとは言い切れない。

 さすれば、借金返済に汲々とし、永田町のキーマンとしての役割が担えなくなるかもしれないのである。

週刊新潮 2015年6月25日風待月増大号 掲載

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