5年生存率わずか1%! 「すい臓がん」に10万円PETと職人エコー
「がんの王様」。日本人の死因1位、年間36万人超が命を落とすがんの中でも、そう恐れられているのが、すい臓がんである。罹患率≒死亡率の、この「死に至る病」こそ、早期発見が重要なのであるが――。
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ステージ4なら、5年生存率は1%。「全国がん(成人病)センター協議会」が調査した、最新のすい臓がんのデータである。
「すい臓は“沈黙の臓器”と言われています」
と述べるのは、東京ミッドタウンクリニックの森山紀之・健診センター長。
「他のがんに比べ、増殖スピードが速いにもかかわらず、初期の自覚症状がまったくなく、見つかった時は既に手遅れというケースが多い。患者さんはたいてい、背中の真ん中あたりに、圧迫感に近い痛みを覚えて病院に来ます。“背中が重い”というレベルのものなので、がんとは思いもしませんが、精密検査を受けるとこの時点でステージ3。余命半年や1年となっていることも多いのです」
ならば、尚更、早期に発見し、叩き潰しておきたいもの。先の「全がん協」のデータを見ても、ステージ1で発見した場合の5年生存率は32%である。むろんこれも厳しい数字ではあるけれど、ステージ4と比べれば、生きる希望は30倍に跳ね上がり、イチローがヒットを打つ確率ほどに、命を永らえることができるのだ。
■身近な武器
「現状、すい臓がんを見つけるには、PET(ペット)がもっとも有効でしょう」
と言うのは、前出の秋津壽男院長。ペットと言っても、犬に何かやらせるワケではなく、「陽電子放射断層撮影」の略称である。
「放射性物質をくっつけたブドウ糖を注射し、それが体内でどう動くかを機械で撮影するのです。がん細胞というのは、暴走的に成長したがっており、栄養源として、常に大量のブドウ糖を欲しがっている“大飯喰らい”。そのため、注射したブドウ糖はがん細胞のところに集まるのです」
検査自体は、多くの医療機関で実施されていて、時間も2時間程度しかかからない。ただ、保険は適用されず、およそ10万円程度の費用が必要になるという。
一方で、
「初期のすい臓がんについては、ブドウ糖を必要としないケースもあり、がんが100%見つかるとは言い難い」
と、先の森山センター長は釘を刺す。
「また、すい臓には、魚の背骨のように『すい管』という管が通っていますが、この近くにがんが出来た場合は、管が拡張されるので、CTやMRIでも確認しやすくなります。意外なところでは、超音波エコー。これならたとえ初期のものでも、すい管との距離が離れていても、発見することが可能なのです」
身近なところに、強力な武器があったものだ。
「とは言え、医者なら誰でもエコーの診断がきちんと出来ると思ったら大間違い。きちんと勉強し、職人的な技術を持つ医師を探さなければいけません。要は、すい臓がんに対処するには、さまざまな検査を組み合わせて、長所と短所を補完しながら行うことが重要なのです」
そう結論づける森山氏の関連医療施設「ハイメディック」には、日本初導入の「PET-MRI」なる、両者を同時に検診できる機器があると言うが、
「受けたい方は、会員になっていただく必要があります。入会金は243万円、年会費は54万円」(同広報)
これは極端としても、「王様」の魔の手から逃れるには、やはりそれなりの“備え”が必要というワケなのだ。