もうSFではない 米軍「ターミネーター」計画の実態
自ら敵を探し、仕留めるロボットはハリウッド映画の中のものではなくなってしまった。開発に血道を上げているのは味方に戦死者を出さずに戦争するのが大好きなアメリカである。
5月27日、英ネイチャー誌上で、ある教授が米・国防高等研究計画局の兵器開発に警鐘を鳴らした。その論文によれば目下の研究には2つの問題点があるという。
「一つは市街地や建物内部をGPSや人間の支援なしに高速で移動し、標的を探索するドローン。そしてもう一つはたとえ通信妨害などにより味方指揮官とコミュニケーションがとれない状態になっても索敵、交戦できる無人航空機です。米軍は将来、自律型致死兵器システムという名の殺人ロボットを開発しようとしているのです。どちらもそこにつながる研究です」(科学部記者)
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。
「実現性は高いですね。米軍はアフガンやイラクで無人偵察爆撃機を運用、さらにステルス無人戦闘機も飛行実験に入っています。何よりも戦死者を出さない無人兵器は今いちばんの最先端で、予算もつきます。ただし、自律型のロボット兵器となると実現にはまだ時間がかかるでしょう」
黒井氏によれば、現在の無人機は遠隔操作して飛ばすのだが、
「モニター映像だけですから誤爆が起きやすい。開発中の無人戦闘機は、ある程度は自動操縦も導入しますが、まだまだ手動に頼らざるを得ず、体感がないだけ操作性も落ちます。無人機がさらに自律的に索敵、攻撃できるようになるには人工知能(AI)が飛躍的に進歩しないと……」
だが、AIの進歩は予想より早いと見るのは科学作家の竹内薫氏だ。
「2029年にはAIが人間並みの知能を持つと言われており、2045年にはAIが人類を完全に超える“技術的特異点”を迎えるという予測がある。こうなると、AIがAIを開発するようになりますから、科学技術の進歩は爆発的に加速します。当然、軍事技術も例外ではないでしょう」
“技術的特異点”はもっと前倒しになる可能性もある。無人の殺人兵器が跋扈する未来は、すぐそこかもしれないのだ。