「浅田真央」現役復帰でも「五輪出場」を明言しなかった3つの理由
日本フィギュアスケート界の女王が帰って来た。去る18日、1年間の休養に入っていた浅田真央選手(24)が現役復帰を表明。俄然、2018年の「平昌五輪」に向けて今後の去就が注目を集めたが、本人は微妙な言い回しで明言を避けた。その背景には3つの理由が――。
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「今の時点で五輪は考えていないです」
浅田の控えめな発言はいつものこと。が、長らく彼女を取材してきた記者たちは、これまでとは違った印象を受けたと口を揃える。
「五輪に関する発言は彼女の本音に聞こえました。その根拠もあるのです」
とは、スポーツ紙記者。
「1つは昨年6月に、国際スケート連盟が採点基準を厳格化したことです。とくにジャンプの回転不足や踏み切り違反が厳しい減点対象となります。『テクニカルスペシャリスト』という判定係が、ビデオで細かく踏み切りと着氷時のエッジの角度を確認するのですが、これが浅田にとって大きな不利となるわけです」
3回転半ジャンプ『トリプルアクセル』は、浅田の代名詞と言うべき大技だ。ところが彼女は、それを完璧に飛べないのだという。
「彼女のトリプルアクセルは厳密に言うと不完全で、わずかな回転不足のまま着氷するケースが多く見られたのです。それでもこれまでは審判が“ギリギリOK”と認めてきました。が、新基準では失敗と判定され、基礎点から3~5割ほどが減点されます」
■ジャンプが障害に
それだけではない。
「浅田には、スケート靴のエッジの外側を使って踏み切るルッツジャンプを反対の内側で飛んでしまう癖がある。これも大きな減点の対象になるのです」
これらは長い選手生活の間に染みついた悪癖で、矯正は容易ではないというから厄介だ。
2つ目は、加齢と共に進む身体の変化である。全国紙の運動部デスクが言う。
「女子選手は15歳から20歳の間に身体的なピークを迎えるとされています。浅田も例外ではなく、徐々に脂肪が付き始めて体形が変化しており、筋力の低下によりジャンプの高さや技のキレも失われています。加齢は故障のリスクも高めますが、すでに浅田は深刻な腰痛を抱えていて、今後もジャンプを多用するのであればそれが悪化こそすれ、回復するとは考えにくい」
皮肉なことに、浅田を世界のトップ選手たらしめていたジャンプこそが、今度は彼女の五輪への道を妨げる障害になるというのだ。
そして最後の3つ目は、他でもない浅田自身のメンタルだという。
「会見では復帰後の見通しを聞かれ、“今はみんなのジャンプのレベルが上がっている”“スケート界では24歳はベテラン”と、新たな採点基準や加齢による身体の変化を意識したと思しき弱気な発言も飛び出しました。今後の選手生活を脅かす大きな“壁”と恐れているからで、記者の間では“平昌五輪までモチベーションを維持できるか自信が持てずにいるのだろう”と、浅田の不安定な心理状態を危ぶむ声も上がりました」
浅田のジュニア時代はまだまだ判定が緩く、現在の厳しい基準の中で育った10代の選手と較べて「旧世代」と呼ばれることもあるという。涙をこぼした「ソチ五輪」直後の「世界選手権」で優勝を遂げ、“引退”への道筋に自ら花を添えていたはずの彼女には、これまで以上に厳しく非情な競技生活が待ち受けている。