「おバカ枠」に戻りたい「スザンヌ」にバカの壁「藤田ニコル」

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 無知であると認めることが、沽券にかかわる時代があった。百人一首を必死に解釈する男の滑稽さを描いた古典落語『ちはやふる』はこの一例だが、それも今は昔である。知らぬことそのものを売りにする「おバカ枠」から足を洗ったはずのスザンヌ(28)が、離婚を機に出戻りを画策。だがそこには、藤田ニコルというバカの壁が屹立(きつりつ)するのだ。

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 島田紳助のプロデュースで、スザンヌがおバカ枠に参入したのが、2007年のこと。現在はNYヤンキース・田中将大投手の妻である里田まいらとユニットを組み、紅白歌合戦にも出場した。紳助が芸能界を引退した11年、スザンヌは結婚。その後、男児をもうけてママタレに転身するも、今年3月に離婚を発表したのだった。

「彼女は、仲の良い有吉さん(弘行)には、“おバカキャラで出直したい”と話していましてね。それを受けて彼は、“離婚をもじったリコンヌなら売れるかも”と冷やかしていたのです」(民放キー局社員)

 だが、そんな彼女の前に立ちはだかるのが、女子高生モデルの藤田ニコルである。

「ポーランドとロシアの血を引く父と日本人の母を持つ17歳。09年に雑誌『ニコラ』でデビューした彼女は、シャープというよりも愛らしく親しみやすい顔立ちですね」(編集者)

 のみならず、珍妙な受け答えでも人気急上昇。バラエティ番組で、彼氏と何カ月ぶりに会うのかと問われ、

「11月が最後だったからー、(指折りつつ)11、12、13、14、15……あれ15?」

 ……数えられない。知っている諺(ことわざ)も自信を持って、

「猿は……落ちる」

 評論家の唐沢俊一氏が、おバカ枠について解説する。

「私が02年から携わった『トリビアの泉』(フジテレビ系)では、教養色のついたネタを使いませんでした。というのも、視聴率が下がるから。現代人は、家では小難しいことは考えたくない。その点、おバカタレントを見ても頭を使わなくていいし、“自分よりバカがいる”と安心できるのです」

 なるほど、彼女らの登場は時代の要請だったのだ。

■芦田愛菜ちゃんに負けた

 その一方で、おバカタレント階層のトップに君臨する鈴木奈々(26)にも、触れておかねばなるまい。

「雑誌『ポップティーン』のモデルを務めた後、バラエティに進出。おバカタレントが結婚などで消えた11年ごろから、その間隙を縫って活躍し始めたのです」

 とは芸能デスク。むろん彼女もおバカエピソードには事欠かないようで、

「“九九やアルファベットが正しく言えない。小銭の使い方がわからないから、いつも札で払ってしまう”と話したり、“パソコンは使えない、昭和の女だから”とうそぶいたり。さらに、当時小学1年生の芦田愛菜ちゃんに『漢字クイズ』で負けたこともありました」

 かようなる2つの壁を前に、スザンヌの前途は多難である。芸能ジャーナリスト・平林雄一氏は先の離婚に言及して、

「会見で泣いたり爽やかにトークしたり、真面目な振る舞い一辺倒だった。結果として、これまでのおバカキャラを完全に裏切ってしまいましたね」

 前出・唐沢氏が、これを受けて総括する。

「トニー谷という昭和の人気芸人に、彼女が重なりますね。嫌味な芸風が売りだったのですが、1955年に息子が誘拐された。記者会見で“息子を返して”と号泣するその姿は、芸人ではなく狼狽する父親そのもの。後に子供は無事に解放されましたが、トニーの毒舌では皆もう笑えず、往時の勢いが戻ることはなかった」

 笑われている裡(うち)が華――。

「ワイド特集 『五月ばか』に付ける薬」より

週刊新潮 2015年5月21日菖蒲月増大号掲載

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