つまらない本に出会ったらどうすればいいのか? 芥川・直木賞作家が語る 小野正嗣×西加奈子
5月15日、東京神楽坂「la kagu」内レクチャースペース「soko」にて、今年1月に『九年前の祈り』で芥川賞を受賞された小野正嗣さんと、『サラバ!』で直木賞を受賞された西加奈子さんの公開対談が行われた。偶然にもお二人の作品は「祈ること」というテーマで繋がっていた。また外国文学の愛読者という共通点も。気鋭の作家二人により、言語や国を超えて広がる小説の魅力についてたっぷり語られた一夜となった。
■ジャストミートする作品との運命的な出会い
ノーベル文学賞作家トニ・モリスンの大ファンだという西さん。モリスンに会いたい一心で渡米し、朗読会にまで足を運んだという。西さんがモリスンの小説と出会ったのは高校二年生。モリスンの処女作『青い眼がほしい』は黒人の女の子が主人公。白い肌に金髪で青い目の白人こそが美しいものとされていた時代。白人が美しいということに疑問をもつ主人公に、西さんは衝撃を受けたという。流行のファッションをしていた自分にあてはめ、本当にこれが美しいということなんだろうか?と、当たり前とされていることへ疑問を感じるようになったと語った。
どうしてこの道を選んだのですか?という西さんの問いに、中学、高校の頃はあまり本を読んでいるほうではなかった、と小野さんは答えた。大学でフランスの現代思想を研究していた頃、先生に勧められたカリブ海の文学に惹かれ専攻を変えたという。地元大分で田舎のおじちゃんおばちゃんたちがしゃべり散らすのを浴びるように聞いて育った小野さん。辞書を引きながら読んだカリブ海文学の光景がその世界と重なったという。
国も時代も人種も違う人々の物語に共感し、自分の問題だと考えることができる。そんな経験を、二人はそれぞれに語った。それこそがまさに、文学の力ではないだろうか。そして作品の中の「問い」と自分の中の「問い」が“ジャストミート”するかは人それぞれだが、そういう作品との出会いはとても大切で、もし出会えれば想像の世界を形作る基礎になる、ともいう。二人の創作の根底にある運命的な出会いについて明かされたかのようだった。
■つまらない本に出会ったら?
二人は会場に詰めかけたファンからの質問にも答えた。「印象に残らない本、つまらない本についてどう考えますか?」との厳しい質問に西さんは、子どもの頃に読んでつまらなかった作品が、大人になって読み返すと面白い、そんな経験が何度もあるという。「自分にはフィットしなかったんだ」と考え、なぜ自分はその本が好きじゃないのかを考えると、自分の核がみえてくると語った。
小野さんも同様に「つまらない本と出会うのはある種のチャンスだ」と述べ、なぜつまらないのか言語化してみることが大事だと語った。西さんの言葉を受け「本は文字列で永遠に変わらない。でも人間は変わる。自分がどう変わったのかを考えるのも大事です」と指摘した。