映画になった「チャップリン」遺体誘拐事件

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「チャップリンの遺体が盗まれていたなんて……」

 と驚いたのは、「てなもんや三度笠」や「裸の大将放浪記」シリーズのプロデューサーでチャップリン好きで知られる澤田隆治氏だ。日本では大きく報じられなかったのだから、知られていないのも無理はない。それにチャップリンの伝記は、彼の死を以て終わるため、その後の話は書かれていないことが多いという。だが、チャップリンの遺体はホントウに盗まれていたのだ。身代金を目的に……。

「1977年のクリスマスにチャップリンはスイスで亡くなりますが、およそ2カ月後の78年3月2日、レマン湖畔に埋葬されたチャップリンの遺体は棺ごと“誘拐”されたんです。犯人はポーランド人とブルガリア人の2人で、自動車修理工場を始めるために、チャップリン家におよそ1億円の身代金を要求したというのです」(宣伝担当者)

 実際に起こった事件を下敷きに映画化したのが、『チャップリンからの贈りもの』(グザヴィエ・ボーヴォワ監督)だ。遺体を掘り出すストーリーなど、ホラー映画っぽいが、そこは喜劇王。

「いや面白かった。チャップリン・ファンにも気持ちよく脚色されています。仏コメディには、ドタバタものと、計算されたものがありますが、この映画はチャップリンにふさわしく、よく計算されたコメディになっていますね」(澤田氏)

 チャップリン死後の物語であるから、彼を演じる役者はいない。だが、現地での報道シーンで、生前の喜劇王の映像が使われている。また、チャップリンが最後に住んだ自宅内でも撮影が許可されており、なにより息子や孫、親族も出演する、チャップリン家全面協力の映画となっている。

「『ライムライト』などの曲も上手く使われていてね、こんな作り方があったのかと思いましたよ。わたしも昔の映像を使って、藤田まことさんを蘇らせることもできるな、なんて」(同)

 7月、恵比寿ガーデンシネマなどで公開される。

週刊新潮 2015年5月21日菖蒲月増大号掲載

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