首領バグダディ重傷 「イスラム国」に“謎の後継者”
預言者ムハンマドの出身一族の子孫と称し、「カリフ」を名乗る「イスラム国」の指導者バグダディが、有志連合の空爆で重傷を負っていた――4月21日、英紙ガーディアンの電子版が報じたが、負傷は3月のことで、しかも「回復に向かっている」との内容に、「なあんだ」と思われた諸賢も多いのではないか。
だが翌日、今度は米誌ニューズウィークが、「イスラム国」上層部は「半狂乱の話し合いを行って」、暫定指導者を決めたと伝えた。“半狂乱”とは大げさでは?
「イスラエルのリベラル系新聞ハアレツでも同様の情報が伝えられていますね。指導者を代行する男の名はアブ・アラ・アフリ。私は初めて聞く名前です」
とは、現代イスラム研究センターの宮田律氏。
「まだほとんど情報が出ておらず、謎が多い人物です。イラク政府の相談役、ヒシャム・ハシミ博士によると、元物理学の講師だそうです。自著もあるインテリで、『イスラム国』の最初期からのメンバー。イラク北西部の街タル・アファル出身らしく、バグダディより聖戦の知識に富み、指導力も上、強いカリスマ性の持ち主だと博士は言っています。バグダディが死亡した場合、後継者となるそうです」(同)
後継者ということは、このアフリもムハンマドの一族とやらなのか。そんなに都合よく子孫がいるもの?
「それはどうでしょう」
とは、東京外国語大学の飯塚正人教授。
「カリフになれるのは、まずスンニ派であること。次に男であること。そして、ムハンマドの部族、クライシュ族の出身でなければなりません。サウジアラビア王家などは、クライシュ族でないという出自が明らかですから、カリフになりたくてもなれません。しかし、日本の織田信長が平氏だと言ったり、徳川家康が源氏を名乗ったように、イスラム圏でも、出身部族がどこであるかは言った者勝ちという面があるのです」
さらに重要なのは、と飯塚教授は言う。
「カリフは五体満足でなければなりません。つまり、空爆で手や脚を失ったりしていたら、カリフの資格も失うことになるのです」
「重傷」で“半狂乱”、の意味するところはコレか