まるで国家ぐるみの壮大な詐欺!? 「朝鮮総連ビル」のひどいインチキ

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 拉致問題をチラつかされ、足元を見透かされたのか。「朝鮮総連ビル」を山形の倉庫会社が買収したのはご存じの通りだ。しかし、それは、本拠地奪還を目指す朝鮮総連の目論見通りだったのである。日本は国家ぐるみで、インチキに乗せられたというほかないのだ。

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 誰しも、隠れ蓑ではないかと疑念を抱いたに違いない。

 今年の1月下旬、朝鮮総連ビルを約44億円もの資金を投じて買い取った『グリーンフォーリスト』(山形県酒田市=稲村武治代表)は、年間売上わずか2000万円に過ぎない倉庫会社だった。やはり予想に違わず、朝鮮総連のダミーであることを裏付ける動きを見せ始めたのである。

「3月23日付の官報に、グリーン社による公告が載っていたのですが……」

 と明かすのは、公安関係者だ。

「簡単に説明すると、『千代田管理』という新会社を会社分割によって立ち上げ、関東地域における不動産賃貸事業の権利義務を承継させるので、もし異議のある債権者は1カ月以内に申し出るようにというもの。関東地域の不動産とは、要するに朝鮮総連ビルのことで、月々2000万円と言われる賃料を受け取る家主としての立場を、新会社にバトンタッチしようとしているのです」

 なぜ、わざわざ、こんな手間をかける必要があるのか。

 そこには、朝鮮総連ビル奪還に向けたシナリオがあるという。

「元銀行マンである稲村代表が8年前に設立したグリーン社は、酒田港の倉庫で大手運送会社などから荷物を預かる仕事もしている。ですが、ビルの買収に関しては、あくまでも総連の意向に沿ったかたちで、所有者として前面に立ったわけです」(同)

 そもそも、44億円の買収資金も自己資金では賄えず、朝鮮総連に用立てられているのである。

「総連の直系団体『白山出版会館管理会』が不動産を売却して得た約17億円を借り入れたり、あるいは、パチンコ業者などの在日商工人が香港にプールしていた資金を還流させたりして調達したと見られています」(同)

 ところが、早くもグリーン社が朝鮮総連ビルから手を引くための作業が進められ、会社分割はその一環だという。

「実は、官報に公告が出される前から、総連傘下に新たな企業が設立されるという情報が流れていました。その企業名が、千代田管理でした。総連は、グリーン社から千代田管理に賃貸事業のみならず、ビルの所有権も移譲させるというシナリオを描いている。そのうえで、そこの会社の株式を系列企業に買い取らせ、本拠地の完全奪還を成し遂げようと目論んでいるのです」(同)

 言うまでもなく、千代田管理は完全なぺーパーカンパニー。実際には存在しない東京・文京区内の番地が、会社設立の住所地になっている有り様だった。

 あらためて振り返ってみると、1990年代の後半から、朝銀信用組合の破綻が相次ぎ、1兆4000億円にのぼる公的資金が投入された。

 大人から子どもまで、国民1人あたり1万円以上を負担した計算になる。

 朝銀信用組合から不良債権を引き継いだ整理回収機構は、そのうちの約627億円分について、実質的に他人名義や架空名義を使った朝鮮総連への融資だったと判断し、返還を求める訴訟を起こした。結果、整理回収機構が全面勝訴したものの、朝鮮総連は返済する素振りさえ見せなかったために、2012年7月、朝鮮総連ビルの競売を申し立てたのである。

 13年3月に実施された1回目の入札では、池口恵観法主の最福寺が45億円超で落札したのに、代金を調達できずに取得を断念。

 続いて、半年後に行われた再入札では、競り落としたモンゴル企業に書類の不備が見つかり、売却は許可されなかった。

■シナリオ通りの役者

 結局、次点の不動産会社『マルナカホールディングス』にお鉢が回ってくることになり、購入最低価格ギリギリの22億l000万円で落札することができたのである。

 政治部デスクの話。

「当初、総連側は、“棚ボタ落札”だとして、マルナカを非難し、東京地裁、さらには東京高裁から売却を認める決定が出されても、執行抗告で抵抗しました。すると、最高裁が昨年6月、売却手続きを停止する執行停止決定を行い、ビルの売却は一時中断されることになったのです」

 表向き、菅義偉官房長官などは、“司法に政治は介入できない”などと中立の立場を保っていた。だが、その時期、日朝政府間で、拉致被害者の再調査について外交交渉が進展中だった。

「総連トップの許宗萬(ホジョンマン)議長は、金正恩第一書記から“本部ビルを死守せよ”との指示書を受け取っていたとされ、日本政府は本音では北朝鮮を刺激したくはなかった。そこで、日本政府の意を汲んだ格好で動いたのが、自民党の山内俊夫元参院議員でした。最高裁で、マルナカヘの売却手続きの再開が11月に認められると、総連側の意向を踏まえつつ、グリーン社に転売する仲介役を務めたのです」(同)

 グリーン社の稲村代表は倉庫業のほかに、元中国大使館員の在日中国人と組んで輸出入やコンサルタント業務などの会社も経営している。それらの人脈から、許議長とも親密な関係を築き、毎年恒例のレセプションパーティーにも招待されるようになっていたという。

 端から、朝鮮総連のシナリオ通りの役者が揃った出来レースだったのだ。

「一般企業ならば、落札された競売物件から追い出されもせず、居座り続けるなんてことは不可能です」

 と、東京基督教大学の西岡力教授が指摘する。

「日本政府としては、朝鮮総連ビルで譲歩すれば、拉致問題の進展に繋がると判断したのでしょう。ですが、相手に恩を売ったつもりでいたのに、なんの見返りも得られなかった。逆に、交渉カードを失ったうえ、朝鮮総連が企てたインチキな手口に国家ぐるみで丸乗りしてしまったと言うほかない状況なのです」

 挙げ句、焦げ付いた債権はほとんど回収できず、朝鮮総連ビルは元の鞘に。これでは、北朝鮮に舐められっぱなしではないのか。

週刊新潮 2015年4月23日号掲載

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