汚職で弱体「朴槿恵」大統領の政治的欲求は日本イジメ
セウォル号事件、日本人記者への弾圧、そして米国大使斬り付け事件……。国際世論から「非先進国」とのレッテルを貼られつつある韓国で、新たに朴槿恵大統領(63)の側近に関する裏金疑惑が発覚した。致命的な醜聞に塗(まみ)れた「窮鼠(きゅうそ)」はどこへ向かうのだろうか。
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当の朴大統領は「まさか」と不意を突かれた思いかもしれないが、傍(はた)から見れば「またか」としか映らない。歴代の大統領経験者とその周辺が、悉(ことごと)く金銭疑惑に身舞われるという黒い歴史を繰り返してきた韓国で、またしても「大統領スキャンダル」が持ち上がったのだ。
大手メディアのソウル特派員が解説する。
「韓国政界のタニマチとして有名だった、建設・開発会社前会長の成完鍾(ソンワンジョン)氏は、李明博政権下で進められていた『資源外交』の関連事業の公金から約250億ウォン(27億5000万円)を横領した疑いを持たれ、検察の捜査を受けている最中でした。そんな折に彼は突如、後に朴政権の初代大統領府秘書室長となる人物ら複数の朴側近に、2006年から12年にかけて、日本円で億単位の裏金を渡したとの『別疑惑』を暴露したんです」
成氏は4月9日に自殺してしまったが、
「ソウルの山中で自殺した彼の遺品の中からは、裏金リストのメモが見つかり、そこには成氏が金を渡したという朴側近ら8人の実名と裏金授受の日付、また『ドイツ』などとも記されていました。そして自殺の直前、彼は韓国紙・京郷新聞の電話単独取材に応じて、裏金の詳細を告白。ある朴側近には、2006年にその側近が朴槿恵とドイツを訪問する際に、ロッテホテルのフィットネスクラブで裏金を手渡したと、生々しく話しています」(同)
「そもそも」として、元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏が後を受ける。
「一連の事(こと)の発端である『資源外交疑惑』は、野党が李明博と同じ党(セヌリ党)に属する朴槿恵を攻撃するために繰り出した秘策でしたが、彼女はそれを逆手に取り、現政権はクリーンであり関係ないと強調すべく、資源外交疑惑を徹底解明すると、特別捜査チームまで作った。ところが皮肉にも、その捜査を進めている過程で、逆に自身の側近の『裏金疑惑』が炙(あぶ)り出されてしまった格好です」
朴大統領にしてみれば、前政権の悪事を裁き、現政権の「清さ」を際立たせるつもりだったところ、明るみに出たのは自らの周辺での裏金疑惑だったのだから、「ブーメラン」とはまさにこのことだろう。
成氏に「裏金受取人」と名指しされた朴側近たちは、
「荒唐無稽なフィクション」
などと疑惑を否定しているが、
「成氏は、裏金は2012年に彼女が勝利した大統領選に使われたとも証言しています」(前出の特派員)
産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は、裏金疑惑の先行きをこう見通す。
「メモに名前や金額が書かれていたんですから、捜査当局は金融機関を調査し、また裏金受取人と指摘された当人たちを呼んで、個別に事情を訊かざるを得ないでしょう。彼らが日本で言う政治資金規正法に問われる可能性は否定できません」
とはいえ、
「韓国に連座制はないので、朴大統領本人には捜査のメスは入らない」(同)
加えて、
「裏金を渡したという肝心の成氏が死亡している以上、真相は藪の中で『朴一派』は結局、逃げ切るのでは」(前川氏)
さはさりながら朴大統領は、
「就任以来、何よりもクリーンさを前面に押し出してきた」(黒田氏)
とあって、捜査の進展に拘(かかわ)らず、疑惑の存在そのものが朴政権の求心力低下を招くのは避けられまい。
■八方塞がり
「任期が5年の韓国の大統領は通常、就任3年を経た頃からレームダック化していくものですが、朴政権は発足2年2カ月で既に弱体化の進行が止まらない状況です」
と、前川氏が続ける。
「1年前のセウォル号事件の対応でミソをつけ、告げ口外交による反日政策も米国の不興を買っている面がある。経済政策も何一つ成功していません」
例えば、
「大卒の就職率は50%台に留(とど)まっています。こういった状況を受けて政権幹部が、『景気が回復するまで、大卒者は中東に働きに出てほしい』という趣旨の発言をした。これに若者は反発し、政府は彼らに『そんなことを言うなら、お前たちが(危険な中東に)行け!』と糾弾されている始末です」(前出の特派員)
この他にも3月の輸出額は前年同期比マイナス4・2%と低調で、韓国経済を牽引してきた「サムスン」も14年、9年ぶりの減収を記録。必然的に、
「韓国金融研究院が3月に発表した世論調査によれば、半年前より景気が悪化したと答えた人が実に67・4%にも達しています」(同)
経済だけではなく、外交面でも、
「米国は在韓米軍基地に、北朝鮮の暴発に備えて弾道弾迎撃ミサイルシステムを導入するよう求めていますが、朴大統領は拒否し続けています。北朝鮮の後ろ盾である中国を刺激したくないからです。これでは米国の信頼を失うばかりで、アジアにおける孤立化も囁かれています」(同)
こうした韓国を取り巻く「負の連鎖」ゆえに、63%を誇っていた朴政権の支持率は今年に入って最低で29%まで落ち込み、一時持ち直しはしたが、今回の疑惑発覚で再下降が確実視されている。
経済も外交も八方塞がりの感が濃密に漂う上に、「唯一」の売りだった清廉さも、もはや完全に風前の灯の朴政権。このような断末魔の状況で、朴大統領は果たして支持率回復を図れるのか。
■「海保の船に…」
『悪韓論』(新潮新書)の著者で、元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏曰く、
「スポーツイベントは国民を糾合する有効な道具で、韓国では2018年に平昌五輪(冬季)が控えています。そこに国民の目を向けて政権への不満を逸らす方法もありますが、朴大統領にそれは叶いません。なぜなら、前回のロシアでのソチ五輪開会式を、彼女は多忙を理由に欠席したからです。次の五輪開催国のトップが出席しないとはと批判され、今さら朴大統領が平昌五輪を支持率アップに利用しようとしても、むしろ国民はしらけるだけでしょう」
また、韓国出身で拓殖大学教授の呉善花氏は、
「対北朝鮮で強硬な態度に出て国民をまとめる手段も、親北朝鮮派が各界に浸透している今の韓国ではまず無理です」
したがって両者ともに、
「さらに反日色を強めるしかない」(室谷氏)
「反日姿勢をより強固なものにする以外に打つ手は考えられません」(呉氏)
こう口を揃え、「またか」の反日政策に打って出るというのだ。
しかし朴大統領と言えば、欧米の要人と会っては日本批判を繰り返し、昨年3月に日米韓の3首脳で会った際も、安倍晋三総理が微笑を湛(たた)えながら韓国語で挨拶したものの、目を合わせようとしなかった「不遜さ」で知られる超反日家である。これ以上、先鋭化する「余地」など残されているのだろうか。「コリア・レポート」の辺真一編集長は、
「日韓首脳会談を拒み続けたり、9月に中国で予定されている『抗日戦争勝利70周年記念式典』に、朴大統領自ら参加する事態が想定されます。5月にロシアで行われる同種の式典には特使を派遣するに留めると発表していますが、9月には自身が直接乗り込んで『親中・反日』の姿勢を明確にし、日本にプレッシャーを与える作戦です」
続けて先の呉氏は、それどころでは済まないとして、こう予測する。
「反日アピールのためには、李前大統領同様、竹島上陸も厭(いと)わないと思います」
さらに室谷氏は、竹島上陸はおろか、もっと恐ろしい暴挙に出る可能性にも言及するのだった。
「日本の海上保安庁の船に韓国側が『仕掛け』てくるかもしれません」
さすがに「スワ戦争か」という一触即発の事態を起こすほど、朴大統領は「正気」を失っていないはずだと信じたい。それこそ「まさか」とは思うが、何も荒唐無稽な話ではなく、
「2006年4月、海保は竹島周辺海域の海洋調査を検討。対する当時の盧武鉉大統領は、海保の船が海域に来たら『(韓国側の)船をぶつけて破壊しろ』との指示を出し、実際、韓国の海洋警察庁も『万全の準備をしていた』。結局、調査自体が中止されて事なきを得ましたが、これは、盧武鉉政権下で大統領府の政策室長だった人物の証言なので間違いありません」(同)
確かに盧氏も在任中、「反日法」と呼ばれる親日派弾圧の法律を制定し、頑(かたく)なな反日家として国内の支持を固める方策をとっていた。このように、「反日大統領」が何をしでかすかは予断を許さないのである。
「まさか」が通じず、何でもありの韓国による、苛烈さを増す日本イジメ。もっとも、“強者”に喧嘩を売っても弾き返されて、「まっさかさま」に墜ちていくのは“弱者”と相場は決まっているのだが……。