「池谷幸雄」の「ミスりんご」セクハラをもみ消した日本体操協会

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 五輪金メダリストでありながら、セクハラ事件で塀の中に転落し、柔道界から永久追放されたのは内柴正人(36)。一方、こちら銀メダリストの池谷幸雄(44)は、セクハラを告発されながら、日本体操協会が不問に付したため、今も指導者の座に居座りつづけているのだ。

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「体操」ではソウルで銅メダル、バルセロナで銀メダルを獲つた池谷だが、女性の「貞操」を奪うことに関してなら、おそらく金メダルを獲得できるだろう。

〈田舎娘に召使、それに都会の女、伯爵夫人も、男爵夫人も、伯爵令嬢も、王女様も、あらゆる身分の、あらゆる容姿の、あらゆる年齢の女性がいます〉

 これはモーツァルト作曲のオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の中で、召使レポレッロが、主人が手を出した女性の“カタログ”を開いて歌うアリアの一節。スペインだけで1003人に手を出したドン・ジョヴァンニほどでないにせよ、池谷もさほど負けてはいない。

 なにしろ、体操を引退して芸能界入りするやいなや、1995年に、元ギリギリガールズの樹あさ子さんを妊娠させ、責任をとって結婚。その間、モデルと不倫し、樹さんが第2子を身ごもって実家に帰れば、テレビ朝日の吉元潤子アナとの不倫も発覚して離婚。2000年には12歳年上の女性実業家と再婚したが、4年後に破局。その後も、事務所を手伝う女性と交際しながら、官能小説家と一夜を共にして妊娠させ……と、表沙汰になった情事だけでも“カタログ”に書ききれないほどなのだ。

 そんな人物が、子供たちに体操を教える「池谷幸雄体操倶楽部」の代表を務めるばかりか、全日本ジュニア体操クラブ連盟の専務理事であるとは、驚かされるが、「案の定」と呆れるほかない事件が起きていた。

 舞台は、昨年7月25日から29日まで、青森県八戸市の、同市体育館で開催されていた東日本ジュニア体操競技選手権大会。

「池谷さんは、ご自身の体操倶楽部から参加した16人の選手の引率者、および連盟の専務理事として大会に参加していました」

 そう語る、大会運営に携わった関係者によれば、池谷の“ビョーキ”が発症したのは26日だったという。

「土日に当たる26日と27日は、青森りんごを宣伝するために選ばれる“ミスりんご”のOGが、放送・進行担当の補助役員として参加していて、池谷さんは彼女に目をつけたのです」

 仮に女性を山本加奈さんとしよう。加奈さんは冷房もない会場内で休憩時間にもゴミ拾いをしたりと、献身的に働いていたそうだが、残念ながら池谷が目をつけたのは、彼女のそうした面ではなかった。

「山本さんから、LINEのIDや携帯電話の番号などを執拗に聞き出そうとしたのです。彼女は教えるのを躊躇したものの、断って大会の成功に支障をきたしてはいけないと考え、教えてしまった。すると、直後からしつこく食事に誘われ、池谷さんが泊まっているホテル名と部屋番号を知らされ、来るように何度も促された。そのうえ、まさに子供たちが競技に勤しんでいる最中に、体育館の中で彼女の尻などに何度も触ったというのです」(同)

 加奈さんに泣きつかれた先輩が、青森県体操協会の幹部に報告し、“事件”は発覚した。むろん、青森側の関係者の怒るまいことか。

「大会のために、どんな仕事も快く引き受けていた加奈さんに、自身も大会委員である池谷さんが、こんなに卑劣なことをしていたなんて、許せません」

 そう憤る青森県体操協会の関係者によれば、

「県体操協会の木村房雄会長や西村幸治郎副理事長らは、烈火のごとく怒り、会場に来ていた全日本ジュニア体操クラブ連盟の池田敬子副会長らに抗議し、警察に通報する旨、大会を中止せざるをえない旨を伝えた。池田さんらは慌てて“池谷は厳正に処分するから、子供たちのために大会は続けてほしい”と頭を下げ、中止だけは免れたのです」

 ところが、なぜか雲行きが変わっていったのである。

■逃げ回っている

 ところで、セクハラ事件は脇に置いても、池谷の態度については、

「打合せのときも、みんな暑い中、スーツにネクタイ姿なのに、池谷さん1人だけはジャージ姿で、地元のジュニア連盟がコツコツと話し合って決めた大会運営の流れを、突然ひっくり返したりしていた」(同)

 と、評判は決してよろしくなかったようだ。それはともかく、大会が終わって数日後、青森市内の「アラスカ会館」で、県体操協会の会議が招集された。

「10名前後の役員が参加し、日本体操協会から理事が1人、事情の聞き取りに来た。会議が始まってすぐにセクハラ事件について話し合われ、被害者の山本さんから聞き取った経緯がまとめられた書面が、西村副理事長から配られました」

 そう語るのは、県体操協会の別の関係者。会議後に回収された書面には、先に記した通りの“被害内容”が書かれていたという。

 その後、県協会は、池谷処分の連絡を待っていたが、全日本ジュニア体操クラブ連盟の関係者によれば、

「連盟の池田副会長は徐々に“問題ある行動とは考えない”と開き直り始めました。県協会も、ジュニア選手の生殺与奪権を握っているジュニア連盟とは戦争できなかったようです」

 では、全体を管轄すべき日本体操協会はどうか。渡辺守成専務理事に聞くと、

「私は9月15日、青森へ状況確認に行き、調査結果も読みました。日本体操協会にはセクハラ対応窓口もあるので、事実なら窓口に来てくださいと伝えた。でも、青森県体操協会は、これ以上、事を大きくしたくないと言い、池谷の態度の悪さや、大会後に態度を変えたジュニア連盟の池田副会長に怒っていた。だから、両者でよく話し合ってくださいと話したんです」

 当事者意識が、まったく感じられないのである。

 そして迎えた11月、再び「アラスカ会館」。ジュニア連盟の池田副会長らに伴われ、池谷が姿を現した。

「県体操協会の役員7、8人の前で謝罪し、山本さんから聞き取った経緯を書いた書面を読んで、事実関係を確認してもらうと、“間違いありません”とおっしゃっていましたね」

 と、先の県体操協会関係者。池谷は“罪”を認めたのだ。ところが、

「池谷に対するジュニア連盟の処分は、“7月から1年間は理事の仕事を自粛する”というだけの内容。専務理事の立場が剥奪されたわけでもないのです」(同)

 さて、池谷を不問に付すと決まってからは、怒っていたはずの県体操協会幹部も口を閉ざす。そればかりか、木村会長は取材に対し、

「その話は僕には関係ないから。おたくが取材して迷惑しているんですよ」

 と記者を恫喝する始末。

 また、池谷も「週刊新潮です」と声をかけると、にこやかだった顔がにわかに強張り、その後はいくら問いかけても、一切の無視を決めこんだ。この男の“ビョーキ”が断罪されるべきなのは言うまでもないが、

「柔道などほかの競技団体は、セクハラやパワハラでトップの責任が問われているのに、体操協会は理事がみな、自分は関係ないと逃げ回る。池谷の事件は全国のクラブ関係者に知れ渡っていて、協会の対応に批判が集まっています」

 と、日本体操協会関係者。

 渡辺専務理事はようやく、

「新たな疑惑が出ているようなので、再調査します」

 と語ったが、池谷の行為も、体操協会の対応も、世界中のどこでも通用しないものであることだけは疑いない。

「ワイド特集 人間の証明」より

週刊新潮 2015年4月16日号掲載

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