怖いもの見たさで視聴する60代の青春ドラマ「プラチナエイジ」
夫の世話に心を砕き、孫の成長に目を細める熟年妻というイメージは、もはや過去の物らしい。近頃、3人の人妻の恋愛模様を描いた昼のドラマ『プラチナエイジ』(フジテレビ系)が話題だ。「昼ドラ」と言えばドロドロの愛憎劇と濡れ場が最大の売りだが、登場人物は揃って60代の役どころ。半ば怖いもの見たさでチャンネルを合わせたら……。
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舞台は神奈川県の湘南。榊原郁恵(55)が演じる弁護士の夫を持つ主婦と、池上季実子(56)が演じる夫の輸入家具店を手伝う妻は20年来の友人関係。そんな2人が住む町に宮崎美子(56)扮する、サラリーマンの夫との離婚を願う主婦が越してくる。意気投合した3人が織りなす“60代の青春物語”というのが、ドラマの謳い文句である。
ストーリーはと言うと、早くも「昼ドラ」らしい布石が見え隠れしている。
榊原郁恵は自宅の台所のリフォームを依頼した業者に恋心を抱き、池上季実子は夫の浮気や認知症を疑い始めた。また、いよいよ離婚願望を募らせた宮崎美子は競輪で200万円をデット。それを元手にホストクラブに通い始めるという具合。芸能デスクが解説する。
「『プラチナエイジ』は、過去の昼ドラとは一線を画すものです。これまでは30代から40代の男女が主人公でしたが、今回は大きく年齢を引き上げ、初めて還暦を迎えた女性を主人公に据えたところが新しい」
この試みの背景には、大きな世相の変化があったという。
「5~6年程前までテレビ界では、高齢者の恋愛やセックスというテーマはタブーでした。それが徐々に、恋愛もセックスも高齢者が前向きに生きていく上でとても大切なことであるという風潮が強まってきた。そういう高齢化社会の現実を上手く捕まえたドラマだと思います。また、最近の60代女性は若々しい人が多いですから、榊原、池上、そして宮崎というキャスティングも不自然さを感じさせません」(同)
■長生きし過ぎ
劇中、池上が「女は一生、死ぬまで現役!」と叫ぶシーンがある。日本医科大特任教授の海原純子氏に聞いてみると、
「60代のシニア女性たちは、セックスを伴う恋愛よりもむしろ、自分を一人の女性として認めてくれるような男性に喜びを感じます。ちょっとしたときめきを求めるというのでしょうか」
あくまで肉体関係よりも精神的なつながりを重視するのだという。だが、評論家の徳岡孝夫氏の見方はあくまで冷ややかだ。
「日本人が長生きし過ぎるから、こういう低俗なドラマが人気になるんです」
と前置きした上で、
「還暦を過ぎた元気な主婦族は気楽なもので、亭主には無関心な代わりにお隣のちょっと若くてハンサムな亭主に色目を使ったりする。そんな女性たちに、今から“年齢相応に孫の成長を見守るような良いお婆ちゃんになりなさい”なんて言ったところで“古臭い考え方”と笑われてしまいます。昔の日本人はもっと短命で、年を取れば恋愛だとか言う問もなくお迎えが来た。ドラマは時間を持て余した老人たちが見るのでしょうが、それもこれも、相も変わらず日本社会が平和ボケしているということですね」
長命社会の徒花――。