張本氏に聞かせたい キングカズが現役にかける思いとは

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 野球解説者の張本勲氏が、キングカズこと三浦知良選手に対して発した「引退勧告」が話題を呼んでいる。12日放送の「サンデーモーニング」で、張本氏は三浦選手について「スポーツマンとしてもう魅力もない」「若い選手に席を譲ってやらないと。伸び盛りの若い選手が出られないわけですよ。だからもう、お辞めなさい」などと発言したという。これに対して「失礼だ」「大きなお世話」といった声が上がったのである。

 当の三浦選手は、これに対して「激励と思って頑張ります」と前向きなコメントをしたという。

 張本氏はともかく、多くのファンは三浦選手に今でもスポーツマンとしての「魅力」を感じている。プレーのみならず、ピッチの外での言動も多くの支持を得ているのは事実である。2014年に三浦選手が刊行した著書『とまらない』には、彼の現役にかける思いがよくわかる文章が収められている。その一部をご紹介しよう(以下は、同書「プロローグ」より)。

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■前へ。次へ。それだけを考えて。

 月日を重ねるごとに、サッカーへの思いがひしひしと強くなっていく。現役選手であることの充実感を、一日一日、大切なものとして噛み締めている。一日、一歩、ワンプレーが、とても貴重なものに感じられる。その重みが、僕を、俄然、やる気にさせる。(略)

 シーズン前の練習試合。スポーツ紙の記者がぞろぞろと見にきてくれる。次の日の新聞には、今年47歳になる僕(注・当時)がピッチを駆ける写真が載る。みなさんはその写真から色々なものを感じ取るのだろう。僕が積み重ねてきたものを感じ取り、僕の姿に何かを重ね合わせるのだろう。何よりも僕自身にとって、サッカーで懸命に走っている自分の姿を見るのが一番幸せだ。サッカーが楽しいとか居心地がいい、では足りないかもしれない。僕はサッカーを生きている。(略)

 僕は振り向かない。プロになって29年になろうが、30年になろうが40年になろうが、たとえ何年になろうとも。

 もちろん、反省はしますよ。オフ中の12月だったら、「なんと奔放で野放図な生活をしてしまったことか。シーズン中なら考えられない……」と、反省することは多いですよ。

 でも後ろは振り向かずに。昨日でも明日でもなく、「今日」しか僕の目には映らない。今日というこの日、このひととき、自分に何ができたのか。自身のどこを伸ばせたのか。そんな今日を、自分がどう感じているのか。それこそが大事なんだ。(略)

■とまらない

 人生は本当に一つひとつの積み重ねでしかない。たくさんハットトリックができた、それはもういい。次、そしてまた次の1点へ。そして次の1勝へ。これなんです。(略)

「カズは私生活でも止まってないよ」。友人に言わせるとそうらしい。「常にスケジュールはいっぱいだし、何事も人任せにせず自分でしないと気がすまないし。ひとところにじっと座っていられないんじゃないの?」。止まっていない、止まれない?

 奇麗な引き際をみせて現役としての歩みを止めようだとか、指導者の道を新たに歩もうだとか、いまだにまったく考えもしません。「とまらない」。いいんじゃないでしょうか。

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 三浦選手は、スポーツも若さや勢いだけが魅力ではないということをプレーで、言葉で教えてくれている。

デイリー新潮編集部

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