水面下で手を結ぶ「イスラム国」と「アサド政権」

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 混乱の極みとは、まさにこのこと。“アラブの春”を契機に始まったシリア内戦が、5年目に突入した。当初はアサド政権と反体制派の対立だったが、過激派組織『イスラム国』が台頭して以降は三つ巴の状態に。

「さらに、昨年から新たにクルド人部隊も参戦し、現在シリア国内では4勢力がせめぎ合っています。死者数は既に21万人を超えました」(外信部記者)

 欧米は反体制派に肩入れして事態の打開を試みるも、いまだ効果なし。一方、泥沼の内戦を招いた当事者であるアサド大統領は、何やら不穏な動きを見せている。

「かねてより噂は存在したのですが、アサド政権が『イスラム国』に対し事実上の財政支援を行っていることが明らかになったのです」(同)

 もっとも、両者は表向き敵対関係にあり、大っぴらに手を結んでいるわけではない。間を取り持ったのは、シリア人のブローカーだ。

「問題の人物は、土木会社を営むジョージ・ハスワニという男。彼の手引きにより、アサド政権は『イスラム国』の支配域で産出される原油を購入していました」(同)

 確かに『イスラム国』は、原油販売で1日あたり日本円にして1億~2億円を稼ぐとされてきた。だが、その買い手がアサド政権だというのは衝撃の展開である。

「原油取引だけではありません。両者はハスワニの会社に出資し、シリア北部で天然ガスの採掘所を共同運営してもいたのです」(同)

 これらのことが欧州連合に露見し、ハスワニ氏はEU域内への渡航禁止と資産凍結を言い渡されている。

 それにしても、なぜアサド政権は、表面上は互いにいがみ合う『イスラム国』と水面下での取引を行うという、二枚舌を使うのか。

「おそらく彼らにとって、これは生き残りをかけた窮余の策だろうと思います」

 と、東京外国語大学の飯塚正人教授は分析する。

「独裁を続けてきたアサド政権は今や四面楚歌で、資源調達に困っても周辺国は助けてくれない。そこで国内を見渡したとき、最も都合の良い相手が『イスラム国』だったのでしょう。反体制派に比べて与しやすい、との目論見もあったはず」

“ならず者”すら利用して延命するアサド大統領、やり手なのは間違いないかも。

週刊新潮 2015年3月26日花見月増大号掲載

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