イラク人弁護士の証言「10人殺すと昇進するイスラム国の兵士」
残忍さを剥き出しにするイスラム国兵士だが、彼らが躊躇(ためら)いなく人を殺(あや)める根底にあるものは。兵士と接したイラク人弁護士が、その実態を証言した。
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「果たしてこれは人間のすることか、と思いました」
と、国際電話の向こうで興奮気味に語るのは、イラク人のアフマド氏(35)。
バグダッド南部のムサイーブで弁護士を務めている氏だが、そこは昨夏から、イラク軍とイスラム国軍との間で激しい戦闘が行われた地域である。
「イラク軍の捕虜になった、若いイスラム国の兵士の尋問に立ち会ったのです。彼の口からは、次々とイスラム国の軍隊の実態が明らかにされました。“部隊での昇進の基準は何か?”に話が及んだ時のこと。彼は“それは、たくさんの人を殺すことだ”と言うのです。それも“民間人でも女性でも子供でもいい。とにかくイスラム国の理念に賛同しない者を数多く殺すことだ”と」
■自分の妻を…
非戦闘員すら見境なく手にかける。彼らが兵士でなく、テロリストと唾棄される所以である。しかし、それを制度化までしているのが、「イスラム国軍」なるものの実像なのだ。
そして、次の話を聞けば、彼らの行いをテロと呼ぶことすら憚られるであろう。
「下級兵士が昇進するための条件に、“10人を殺害する”というのがあるそうです。彼は9人までは“達成”できた。しかし、どうしてももう1人が足りない。そこで選んだのは、最も身近な人を犠牲にすることでした。“自分の妻を殺して10人にしたんだ!”。そう述べる彼を見て、私はただただ驚きました」
中東で今、世界に牙を剥いているのは、こうした「常識」を遥かに超えた存在なのである。