イスラム国ネット機関紙に「アラーの戦士は老人ホーム拡充中」

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 軍事独裁政権に限らず、国家運営にプロパガンダ戦略はつきものだ。独立国家を標榜する彼(か)のならず者集団もこのインテリジェンスに取り組んでいるが、その感覚はどこかずれている。

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〈アラーの戦士は村々を解放するだけではない。住民のニーズも無視することはない。(中略)預言者は代理人を指名し、残される住民の生活の面倒を見るよう命じた。(中略)たとえ苛烈な戦争の最中であっても、可能な限り、ムスリムたちのニーズに応える〉

 これは、イスラム国の英語版ネット機関紙『DABIQ(ダビク)』に掲載された謳い文句だ。同紙は、アラビア語圏外の人間にもイスラム国の“魅力”をアピールする狙いで昨年7月に創刊された。毎月1回ほどのペースで発行されている。応えているニーズとは。

〈地域のインフラを再整備している。電気の復旧、農業地域での灌漑施設の整備、高速道路と一般道路の補修も行っている〉

 橋の修復工事の様子も載せ、写真付きで自分たちのインフラ整備を声高に喧伝しているのだ。さらにイメージアップ戦略は医療・福祉の厚生面にも及ぶ。曰く、

〈我々は小児がん患者への施療にも力を注いでいる〉

〈老人ホームの拡充を行い、人々が充実した生活を送れるよう努めている〉

 優しそうな医師が子どもの治療にあたり、老人ホームではお年寄りたちが憩いのひと時を過ごしている。

 しかし奇異に映るのは、他のページで紹介されるコンテンツ。捕虜にした多数のシリア軍兵士などを裸にし、処刑地まで“死の行軍”をさせたり、戦地で射殺した敵兵の写真を多数アップし、戦力を誇示しているのである。化けの皮が剥がれるだけで、どうにも理解できない感覚だ。しかし彼らにすれば、これも兵士のリクルートには必要な情報ということなのか。

「特集 暗黒の支配地域に電話インタビュー! のべ37人に21時間15分! 『イスラム国』大全」より

週刊新潮 2015年2月5日号掲載

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