事務所とケンカ別れで移籍した 演歌のホープ「福田こうへい」が喪失したもの
「あとに戻れぬ人生は/苦労がまんのいばら道/義理はきっちり命は熱く~♪」
演歌歌手の福田こうへい(38)はセカンドシングル『峠越え』で義理人情の大切さを歌い上げた。が、昨年暮れには、歌詞とは真逆の振る舞いで所属事務所と移籍を巡ってケンカ別れ。遂には泥沼裁判に発展した、演歌界のホープが喪失したものとは。
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福田の事務所トラブルは、昨年末に本誌が報じたことで明らかになった。NHK紅白を最後の仕事として、デビューから所属した「オフィスK」との契約を更新せず、新年から「ノア」へ移籍する交渉を水面下で進めていたのだ。売れっ子の思わぬ裏切りに、怒りが収まらないのはオフィスK。昨年12月26日に福田に対し損害賠償の支払いを求めて、東京地裁に提訴した。
「裁判だなんて、これまで思ってもみませんでした。でも、福田の勝手な振る舞いは事務所の評判と共にスタッフや所属タレントの名誉を傷つけました。それを回復するためには、やむを得ない判断でした」
とはオフィスKの関係者。
「福田は昨年夏頃から、うちとの専属契約中にもかかわらず、公然とノアとの業務調整を進めてきました。当然ですが、歌手やタレントの芸名や肖像、写真、経歴などの使用は所属事務所に限られます。彼はホームページで移籍後のコンサートスケジュールなどを公表しており、これは事務所への背信行為と同時に重大な契約違反に当たります。何度もやめるよう求めましたが、彼は一向に聞き入れようとしませんでした」
訴えでは、失った事務所の信用や混乱したファンからの問い合わせなどで被った損害金として、100万円の支払いを求めている。
■新曲が自主制作
そんな福田の活動を振り返ると、デビュー曲『南部蝉しぐれ』と、続く『峠越え』の販売枚数は合計40万枚を突破。元日に発売された『おかげさま』も2週間余りで2600枚以上を売り上げるなど、根強い人気があることが分かる。
加えてコンサートツアーも順調で、4月末までに全国22カ所の公演が予定されているが、すでに5カ所は完売という。が、芸能ジャーナリストの平林雄一氏は次のように指摘する。
「本人は気づいていないようですが、彼は自分で今後の歌手人生を棒に振ってしまったかもしれません。というのも、売れてすぐにそれまでの事務所を離れるのは芸能界が最も忌み嫌う背信行為。一度“業界の和を乱す人物”とレッテルを貼られてしまうと、他の事務所が共演を嫌がったり、テレビ局がキャスティングに消極的になるなど、仕事への影響が出てくるからです。紅白歌手という看板があるので1~2年は地方回りも順調でしょう。でも、今後はレコード会社が二の足を踏んで、新曲が自主制作になる可能性もありますよ」
その場合は、自身を照らし続けた眩いスポットライトも失うことになるという。
「自主制作では大宣伝もできず、これまでのようなヒットは望めません。となると紅白はおろか、日本レコード大賞などの檜舞台からも姿を消すことになります」
冒頭の『峠越え』にはこんな歌詞も。♪「ひとつ違えば次から次と/待ってはくれない向かい風」。
得たものと言えば、業界の掟という“向かい風”――。