「イスラム国」日本人拘束事件 「2億ドル」人道支援が事件の引き鉄という意見は正しいか?
ストックホルム症候群というのをご存じだろうか。人質事件の際に、被害者が犯人に同情したり、救出する側に敵意を見せてしまう現象だが、この人たちの頭の中では、中東への2億ドルの援助が事件の“引き鉄”になっているようなのだ。
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人質事件が明らかになった翌日、さっそく2億ドルに噛みついたのが、山本太郎参院議員である。
〈2億ドルの支援を中止し、人質を救出して下さい〉
とネットに書き込んだのを追いかけるように、今度は1月25日のNHK番組で、同じ「生活の党と山本太郎となかまたち」の小沢一郎代表までもが援助を批判する。
〈わざわざイスラム国に宣戦布告のようなことをしたということです。(安倍総理は)イスラム国と戦う周辺各国に援助すると言ったらしい。これは彼らにとっては、まさに自分たちの敵を援助すると捉えられても仕方がないと思うんです〉
〈人道支援の名前で言おうが、後方支援、補給が戦争そのものなんです〉
だが、小沢氏といえば、湾岸戦争の際に130億ドルもの戦費支援を批判も聞かずに決めた張本人ではなかったか。元内閣官房副長官補(安全保障担当)の柳澤協二氏も援助を批判する一人である。ジャーナリストのインタビューに答えて、
〈こういうことがなければ、もっと常識的な金額で、どこかで話がついていたでしょう。『テロとの戦い』を標榜する安倍首相のメッセージに対応して、彼らの2億ドルという金額、メッセージが戦術として出てきたのではないでしょうか〉
■難民にとって命の糧
そして、柳澤氏は、人質を救うために安倍総理が辞任するべきだと驚くべき持論まで開陳する。そういえば、氏は2004年にイラクで日本人が殺害された際、混乱した情報を官邸に上げて小泉総理から叱責された“前科”がある。官僚を辞めても世間を混乱させているのだから相変わらずである。
また、元経産官僚の古賀茂明氏にいたっては、23日の「報道ステーション」で、
〈イスラム国がやっていることはとんでもないことですけれども、言っていることには結構共鳴する人たちが多いんです〉
とテロ集団の肩を持つ始末。他にも、共産党の池内沙織議員などがここぞとばかりに騒いでいるが、そもそも2億ドルは難民を救うためなどに使われる金だ。人質の命はもちろん大事だが、1000万人以上の難民にとっても明日の命をつなぐ“糧”である。
危機管理コンサルタントの田中辰巳氏が言う。
「中東への難民支援は以前から行われてきたことです。2人の人質は支援を表明する前に捕まっており、テロも援助表明の前から起きていた。イスラム国の狙いは恐怖支配の強化、日本と国際社会の分断、そして人質を使ったプロパガンダ。小沢さんたちは、イスラム国が望んでいることを支援しているようなものです」
元外務省主任分析官で、作家の佐藤優氏も呆れるのだ。
「今回、安倍さんが行かなくても、イスラム国はどこかで日本に“戦争”を仕掛けてきたはず。それを置いて援助ばかりを批判するのは、因縁をつけて政治の争点を作りたいだけです」
平和な国の平和な“言いがかり”というわけである。