マグロを殺したのは誰か 都立「葛西臨海水族園」の怪
昨年10月10日、東京・江戸川区にある葛西臨海水族園は、開園25周年を迎えた。だが、異変は26年目に入ってすぐに起きた。水族園の目玉である「大洋の航海者」水槽を回遊する魚類が、次々と死に始めたのだ。初めてのことだった。
「11月1日時点で、クロマグロ69匹、スマ52匹、ハガツオ38匹の計159匹がいましたが、12月以降、死亡する個体が増加。1月19日にはスマが、26日にはハガツオが全滅し、残るはクロマグロ3匹のみです」(葛西臨海水族園)
急に速度や向きを変えるなどの、スマの異常遊泳が発端だった。これが群れの泳ぎを乱し、死亡する個体が増えた。このうち、明らかな骨折が見られたのは半分程度だという。水族園は、12月10日から始めた別の水槽の改修工事の影響と考え、音や振動などの対策を施したが、効果はなかった。すわ事件か?
「複数の大学や研究機関で病理検査をしていただいたところ、1月20日に、クロマグロ2体とスマ1体の脾臓から、同一のウイルスが検出されました。ただ、ウイルスの特定はできず、このウイルスが異常遊泳や死亡の原因につながるものなのかもわかっていません」(同)
気になるのは、水槽への新たな個体の追加だ。
「水槽を泳ぐ魚の予測総体重で個体数を調節しており、年に1~2回、追加を行っています。ちなみにクロマグロは今年度、1匹8万円で数匹入れました」(同)
直近の追加は11月6日。外洋で捕獲したスマ31匹を水槽に入れた。異常遊泳と大量死はこれ以降に発生しているため、新入りのスマからウイルスが感染した可能性も考えられるが、推測の域を出ない。
「マグロのウイルス感染症は、マダイイリドウイルス病とウイルス性神経壊死症が知られています。ただ、海産魚に感染する既知のウイルスは数十しかなく、未知のものが多い。個体の傷口やフンから出たウイルスが、海水を経て口や鰓(えら)から感染すると考えられますが、詳しいことはまだわかっていない」(独立行政法人水産総合研究センター)
“放射能が原因”というトンデモな風説はさておき、“誰が殺したのか”の原因究明には、まだ時間がかかりそうである。