最期を看取った“養女”に「高倉健」が遺した土地8億円の遺産目録
「喧嘩をすれば弁護士の食いもの。病気をすれば医者の食いもの。死ねば坊主の食いもの」と作家・里見とんは語っている。もっとも、映画俳優・高倉健(享年83)の場合、この言は当たらない。喧嘩はともかく、昨年11月、悪性リンパ腫で入院中の慶応病院で亡くなった名優の遺産は、土地だけで8億円超。そして、このすべては最期を看取った“養女”が相続することになる。では、その目録とは――。
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今から十数年前のことである。“身の回りの世話をしてくれる人”を探していた健さんは、養女を紹介された。
「彼女は女優としてドラマやCMに出演したのち著述業に転じ、2、3の著書がある。現在51歳、目鼻立ちのくっきりした美人です」
と、さる芸能関係者が次のように打ち明ける。
「健さんと知り合って間もなく、東京・世田谷区瀬田にある彼の自宅で生活するようになったのです」
いわば偶然がいたずらをした。ともすると彼にとって単なる点景だった彼女は、特別な存在へ。結果、一昨年5月に養子縁組し、晴れて親子となっていたのだ。
よく知られるように、高倉健は1971年に江利チエミと離別して以降、独身を貫いてきた。
「彼には配偶者も養女以外の子や孫もありませんから、彼女が遺産のすべてを相続することになります」(税理士の鈴木修三氏)
そしてこのうち、大部分を占めるのが土地である。まず、前出・自邸の敷地は約260坪を誇る。
「坪単価は250万円」(不動産業者)というから、ざっと6億5000万円。
さらに、港区赤坂の閑静な住宅街に立つ低層マンションの一室。築40年でおよそ200平方メートルの物件だが、「坪300万円の価値はある」(同)ようで、約1億8000万円となる。
それだけではない。東日本のさる別荘地に約500坪の土地も保有しており、坪2万円として1000万円。これで締めて8億円也。
■6億円弱を手に?
その他、健さんはポルシェ・カイエンやベンツSLなど、2000万円に達する高級外国車も複数所持していた。ちなみにこれらは、国民的スターのこだわりに従った特別仕様車。マニアならずとも垂涎の的ゆえ、市場価値はむろん高かろう。
加えて別の関係者曰く、
「健さんは今から2年ほど前、アメリカに2つ持っていた別荘を売却しています。だから、現金だけでも2億円は下らないでしょう」
なるほど、それでは仮に、健さんが10億円を遺したとすると、
「課税対象は9億4000万円。50%の相続税率等を勘案し、養女は6億円弱を手にすることになる」(相続に詳しい武内優宏弁護士)
最後に、健さんと同じ病を患ったものの生還した、ジャーナリストの徳岡孝夫氏がこう評す。
「自身が有限だと自覚すると、何らかの形でこれを残したいと考えるもの。養子にしたのは、傘寿を迎えて結婚するのは滑稽だから。とにかく安心して死ぬため、彼女の存在が必要だったのでしょう」
人生最終章に加えた履歴が健さんの顔かたちをどう変えたか、今となっては確かめようもないのである。