メジャーで20億円よりカープへの愛! 「黒田博樹」美談の復帰劇を深読みする

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 もはや“復縁”は絶望的と思われていた。しかし、広島カープがコイ焦がれた男は昨年末、メジャー球団からの巨額オファーを蹴って古巣に舞い戻ることを表明。そんな黒田博樹(39)にメディアもファンも拍手喝采だが、奇跡の復帰劇を深読みすると球団とエースの思惑が透けて見えるのだ。

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 もちろん、黒田の決断が称賛に値することは言うまでもない。大手紙の運動部デスクも、

「メジャーでの5年連続2桁勝利は日本人投手として初の偉業ですし、ヤンキースの先発陣のなかでも抜群の安定感を誇っていた。黒田がヤンキースをFAになると、当然のようにメジャー球団からオファーが殺到しました。サンディエゴ・パドレスは年俸1800万ドル(21億6000万円)を提示しています」

 にもかかわらず、黒田が選んだのは“年俸4億円+出来高払い”が条件の広島カープだった。

 メジャー球団と比較するのは酷な話だが、古巣への復帰と引き換えに黒田が17億円を棒に振ったことは事実。これにはスポーツ紙だけでなく、読売新聞までも〈黒田 広島愛の決断〉と、その男気に賛辞を贈った。

 ともあれ、最も喜びを噛み締めているのが広島の首脳陣なのは間違いない。

「移籍交渉を主導してきた松田元(はじめ)オーナーも狂喜したそうです。広島は1991年を最後にリーグ優勝から遠ざかっていますが、去年、一昨年と2年連続でAクラス入りを果たした。上位を争う巨人と阪神が補強で苦戦を強いられたのを尻目に、広島は黒田に加えて阪神の主砲だった新井貴浩の復帰も決まった。自身の後任候補である甥っ子をオーナー代行に据えた松田さんにとって、24年ぶりの優勝は格好の“花道”なのです」(同)

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 だが、美談ばかりが飛び交う一方で、こんな声も。

「ここ数年、オフシーズンに入る度に黒田の復帰情報が取り沙汰されてきました。ただ、昨年はシーズン終了直後から“今度こそあり得るぞ……”と囁かれていたのです」

 そう明かすのはスポーツ紙デスクである。

 つまり、担当記者の間では今回の電撃復帰が想定内だったというのだ。その理由とは、

「野村謙二郎前監督が今季限りで退任したからですよ。野村さんは野手出身ですが、投手の練習にも平然と口を出して野球観を押し付けるタイプ。自分の投球スタイルを貫く黒田とは折り合いが悪い。広島がクライマックスシリーズ直前に野村監督の退任を発表したのは、黒田への“サイン”だと言われています。一昨年、引退した前田智徳をコーチ陣に加えなかったのも黒田とソリが合わないからでしょう。広島は黒田を迎え入れる体制をベンチから整えてきたわけです」(同)

 そして、黒田自身も冷静沈着なピッチングさながらに、復帰のタイミングを見定めていたという。

「何より緒方孝市新監督との関係は良好ですし、エースの前田健太や、新人王の大瀬良大地を擁する投手陣は12球団でもトップクラス。ここで黒田が2桁勝利を挙げて悲願の優勝に貢献できれば、将来の監督の座は約束されたも同然です。どんなにメジャーで数字を残しても、ヤンキースの監督にはなれませんからね」(同)

 天秤の両端にカープの監督と20億円……。やはり初めにカープ愛あっての決断と言わざるを得まい。

「ワイド特集 男の顔は履歴書 女の顔は請求書2015」より

週刊新潮 2015年1月29日号掲載

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