少女を自爆死させる「ボコ・ハラム」の狂気

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 賑やかな市場に向かって歩いていく、ひとりの少女。入口では身体検査をしている。だが次の瞬間、少女が身に着けていた爆弾が破裂し、19人が巻き添えに――。

 ナイジェリア北東部で、この凄惨な自爆テロが起きたのは、1月10日のこと。イスラム過激派ボコ・ハラムによる犯行だとされ、何者かが遠隔操作で爆発させたものと見られている。

「余りの酷さに言葉もない」

 と嘆くのは、現代イスラム研究センターの宮田律氏。

「少女は、自分が何を持っているのかも知らされていなかったとされます。『イスラム国』の残虐非道ぶりも相当ですが、無邪気な子供を人間爆弾に仕立て上げるようなマネはしておらず、より倫理観が欠如していると言っていい」

 ボコ・ハラムとは、直訳すれば“西洋式教育は罪”という意味になる。もともとは熱心なイスラム教学習グループだったのが、次第にテロ組織としての性格を強め、ナイジェリア政府と対立。昨年4月、学生寮から240名の女子生徒を拉致したことで、世界的な注目を集めた。宮田氏が続ける。

「アフリカ一の人口1億7000万人を擁するナイジェリアは、イスラム教徒中心の北部とキリスト教徒中心の南部に二分されます」

 しかし、貧困率が実に8割にも達する北部では、近年、比較的裕福な南部出身のジョナサン大統領への不満が噴出していたという。

「現状打破を掲げるボコ・ハラムに、心情的に流れた住民もいるのでは。少女を犠牲にしたテロは、目的達成のためなら手段を問わないとの姿勢の現れでしょう」(同)

 一方で、ジャーナリストの白戸圭一氏は、政府側の責任も大きいと指摘する。

「ナイジェリアは2月14日に大統領選を控えており、再選を狙う大統領は自身の批判要素になりかねないと、テロ情報の拡散を自粛している。従って被害の実態が把握しきれていないのです」

 加えて、ボコ・ハラムを相手取る政府軍の兵士たちの労働条件は劣悪そのもの。物資不足や給与未払いなどで、士気の低下が叫ばれる。

「苦肉の策か、政府は住民に武器を斡旋し、自警団の結成を奨励するほど。ただ、そうすると今度は自警団同士の諍いが起き、泥沼化することが目に見えています」(同)

 まさに政府の“自爆”である。

週刊新潮 2015年1月29日号掲載

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