中国が外国企業に強いる「現物出資」という詐欺的慣行 チャイナハラスメントの恐ろしすぎる実態(2)
中国で外国企業が現地資本と合弁会社をつくる時、現地資本の側は現金の代わりに「土地使用権」を差し出してきて、出資とすることが一般的だ。
しかし、この「土地使用権の現物出資」という慣行が、実にクセモノなのである。
現物出資として合弁会社に提供される土地は、合弁相手が地方政府から使用権を購入したもの。地方政府は、土地使用権価格に自分たちの取り分を上乗せして、中国側の出資者に渡す。中国側出資者は、その価格にさらに自分たちの取り分を上乗せして、外国側出資者に提示する。
外国側出資者が「この価格は適正なのか」と調べようとしても、「それは国家機密である」という都合のよい理由で調査は拒否されてしまう。
つまり、外国企業が土地使用権を購入する時、値段は中国側の合弁相手や地方政府の「言い値」なのである。
ひどいケースでは、現物出資した土地の評価額が、中国側の払い込むべき出資額を超えている。この場合は、「合弁会社が中国側の出資者から超過分を借り入れした」という経理処理になり、合弁会社が稼働し始めたら中国側出資者に返済までしなければならなくなる。
言うまでもないが、外国企業が進出するような工業団地は、元々は二束三文の荒れ地だったところである。そこに道路を引き、インフラを整備すれば一丁上がりだ。
そんな土地の使用権を提供するだけでカネががっぽり転がり込んでくるのだから、中国の地方政府が外国企業の誘致に熱心だったのは当然である。地方政府から中国側企業への上乗せ分、中国側企業から合弁企業への上乗せ分は、事実上の賄賂となって中国側の懐を潤すという構図なのだ。
『チャイナハラスメント 中国にむしられる日本企業』の著者、松原邦久氏は、もし中国で合弁企業をつくる場合は絶対に現金出資にすべき、と主張する。どうしても相手が現物出資を譲らない場合は、その相手はあなたを騙そうとしているか、本当にカネがないかのどちらかなので、合弁相手としては相応しくないそうだ。
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『チャイナハラスメント 中国にむしられる日本企業』では、改革開放以来30年の変遷を見てきたスズキの元中国代表が、中国でのビジネスで当たり前に見られる詐欺的な契約、デタラメな規制、企業間取引にも持ち込まれる「反日」などについて徹底解説。併せて中国でのビジネスに求められる「冷徹な戦略」についても詳述している。