ニカラグア「大運河」掘削で「米」「中」攻防戦

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 中国の覇権主義が、世界地図に新たな線を1本書き加えようとしている。

 昨年末に始まった、中米ニカラグアの巨大運河建設工事。太平洋とカリブ海を結ぶ全長278キロのルートは、パナマ運河の3・5倍の長さ。総事業費は実に500億ドル(約6兆円)と、同国GDPの4倍に相当する。

「中国系の香港企業が工事を請け負い、2019年に完成予定とされています。中国政府は表向き無関係を装っているものの、資本注入は間違いないと思われる」

 と現地記者は語るが、この壮大なプロジェクトが果たして技術的に可能なのかと訝る向きも多い。首都マナグアでは、環境保全を求める住民らの抗議運動も断続的に繰り広げられている。

「それでもニカラグア政府が運河建設に前向きなのは、工事により5万人の直接雇用と20万人の関連雇用が見込まれるから。開通後のGDP成長率は、2倍以上になるとも予測されます」(同)

 だが無論、これが単なる国際協力の美談として片づけられるはずもない。中国側の目論見を、筑波大学の遅野井茂雄教授が推察する。

「第一に、経済面の狙いがある。今も中国はベネズエラから石油、ブラジルから鉄鉱石を大量に輸入していますが、運河開通でその流れが一層加速するはずです」

 仮に日本をはじめとする他国がニカラグア運河を利用しようとすれば、運営主である香港企業に通航料を支払うことになるという。

「そしてもう一つ、地政学的な戦略というのも当然ある。今回の運河建設に関し、中国が米国を意識しているのは確実です。その点、ニカラグアのオルテガ大統領が反米的スタンスなのは、中国にとって好都合だった」(同)

 100年前に米国が建設したパナマ運河は、船舶の大型化に対応すべく現在、拡張工事が行われているが、

「水深の都合で15万トン級が限界のパナマ運河に対し、ニカラグア運河は40万トン級船舶が航行できるよう計画されています。直ちに軍事的緊張は高まらずとも、米国には由々しき事態でしょう」(同)

 キューバとの国交回復を急いだのは、“裏庭”を中華思想から守るためだった?

週刊新潮 2015年1月15日迎春増大号掲載

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