広告会社のOLが猟銃を手にしたワケとは 「狩りガール」狩猟の現場報告(2)

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 にわかに注目を集める、自ら狩猟を行う“狩りガール”。2014年初めにデビューしたばかりの新米“狩りガール”、ありさん(33)が猟銃を携え、果敢に挑んだ緊迫の狩猟現場を自ら報告する。

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 新米の狩りガールである私は、普段、広告関係の会社でOLをしている。

 狩りガールになろうとしたきっかけは、3年前、大学時代の友人に連れて行かれたジビエ料理店で、鹿を食べたことだった。鹿肉のローストを口に入れた瞬間、ジューシーで力強い赤身の味が口いっぱいに広がった。

 その美味しさに感動し、マスターに、

「この肉は、どこで獲ったの?」

 と訊くと、

「今度、猟の現場を見てみたら」

 と勧められ、その後、実際に猟の見学に行った。

 直(じか)にハンターから話を聞くうち、猟への興味が抑えられなくなって、狩りガールになることを決意。

 会社の同僚や友人からは、「危ないよ」「女の子がやることじゃない」

 と心配されたが、すでに鹿肉の美味しさと猟の奥深さにとりつかれていた。

 ただ、最初は銃を持つことに抵抗があった。だから、罠猟の免許を取得しようかと考えたが、罠猟では生け捕った獲物の頭をバットなどで叩き、止めを刺すことになる。女性の腕力ではなかなか難しく、危険も避けられない。

 ジビエ料理店のマスターからは、銃による猟はどうかとアドバイスされた。

 狩猟を行うには、まず、各都道府県から交付される狩猟免許を取得する必要がある。そのためには、法令などの知識を問う筆記試験や銃を組み立てたりする技能試験、運動能力とかの適性試験にも合格しなければならない。

 さらに、都道府県の公安委員会から、銃の所持許可を受けることも不可欠。

 いまや私の相棒となった銃は、先輩のハンターから2万円で譲り受けた。射程距離50メートル、スラッグ弾という一発弾も発射できる散弾銃だ。

 格好だけでも、狩りガールになれたのは、2014年の1月末のこと。

 私の初猟は、先輩ハンターの紹介で、北海道での“流し猟”に決まった。クルマなどで“狩り場”を移動しながら獲物を仕留める猟である。

 東京近郊の射撃場で練習をし、2月中旬、紋別に近い西興部(にしおこっぺ)村に向かった。ホテルに泊まった翌朝、気温は氷点下20度まで下がり、外は一面の銀世界が広がっていた。

 事前に、現地のハンター2人にガイドを頼んでいたのだが、そのうちの1人は女性ハンターだ。

 ガイドの運転するクルマの助手席で、私はガチガチに固まっていた。それは、寒さからばかりではなく、本当に引き金を引くことができるのかという緊張感も加わってのことだった。

 しばらくすると、雪原にエゾシカが姿を見せた。クルマを降り、そっと接近を試みる。

 だが、警戒していることを示すピャッピャッという甲高い鳴き声を発し、すぐに逃げて行ってしまった。

 その後も、近づいては逃げられるということを何度も繰り返した。

■ラストチャンス

 徐々に、雪の上を歩くことにも馴れてきたころ、再び、エゾシカを林のなかに発見した。足音を忍ばせていくと、今度は、20メートルくらいの距離にまで近づけた。

 猟銃のカバーを外し、慎重に弾を装填する。エゾシカに銃を向け、照準を合わせた。息を止め、引き金を引くと、パーンと乾いた音が響いた。しかし、弾は手前の木に当たり、エゾシカには命中しなかった。

 ガイドハンターから、

「失中(弾を外すこと)ね。でも、初の発砲だから一歩前進よ」

 と励まされた。

 発射の反動で、肩と腕はジーンと痺れていた。

 獲物を仕留められないまま、ずるずると時間だけが過ぎ、その日の日没時刻、午後4時38分が迫ってきていた。発砲できる時間帯は、法令によって日の出から日没までと定められている。

 焦燥感に駆られながら、次なる獲物を探していると、またしても林のなかにエゾシカが現れた。

 しかも、木に遮られ、エゾシカからはこちらの姿が見えていない。どうやら、雪を掻き分け、木の実を食(は)んでいるようだった。

 ガイドハンターから、

「ラストチャンスだ」と告げられ、私は頷いた。

 疲労も溜まってきていたが、意識を集中させ、獲物に近づいていった。射程圏内の20メートルまで間合いを詰める。呼吸を整え、“行ける”という感覚が生じた瞬間、引き金を引いた。

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 次回『「狩りガール」狩猟の現場報告(3)』では初猟の結末と仕留めた獲物の扱い方ついて語る。

週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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