史上初の快挙! 年末ミステリランキングで堂々の三冠達成 米澤穂信『満願』

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 年末恒例の各社ミステリランキング。早川書房「ミステリが読みたい!」、文藝春秋「週刊文春ミステリーベスト10」の発表に引き続き、宝島社「このミステリーがすごい!」が発表になりました。なんと今年は前人未到の三冠を制覇した作品があらわれました。その作品は米澤穂信『満願』(新潮社刊)。

■三冠制覇は史上初

「ミステリが読みたい!」では2位以下に大差をつけての1位。「週刊文春ミステリーベスト10」ではなんと2位にほぼダブルスコアに近い得点差で1位。「このミステリーがすごい!」でも、読書のプロから万遍なく票を集め、堂々の第1位となりました。2008年以降、東野圭吾『新参者』、横山秀夫『64』など二冠を制した作品はあるものの、上記のランキングで三冠を制覇した作品は『満願』が初めて。

 未だかつて誰もなしえなかった偉業を成し遂げた米澤さんは、早川・文春に引き続き、「このミス」1位の知らせを聞くと、

「『満願』は、担当編集者さんと過去の傑作短編集について楽しく語り合ったことが出発点でした。『Story Seller』をはじめとして発表機会にも恵まれ、良い環境でお仕事をさせて頂きました。こうして幅広い読者からご好評を頂いたことを、とても嬉しく思っています。」

 と喜びをあらわにした。

■『満願』に寄せられた喝采の声

『満願』は今年3月に発売された短編集。発売直後から評論家の間で絶賛を浴び、5月には山本周五郎賞を受賞。7月には直木賞候補にも挙げられた作品。流麗な文章と精緻な構成で、ミステリファンのみならず今年のエンターテインメント作品のなかでもナンバーワンとの呼び声も高い。

 ミステリ界からはこんな喝采の声が上がっている。

「多彩なセンスの持ち主が横山や連城に連なる心理劇を紡いだ珠玉集」(書評家・福井健太/「このミステリーがすごい!」選評より)

「彩りの豊かさと完成度の高さは文句なしの出来栄え」(ときわ書房本店・宇田川拓也/「このミステリーがすごい!」選評より)

「人の心の闇の濃淡を、人の心の闇の多様さを体感させてくれる作品集。観察力、表現力、想像力。いずれも一級品である」(ミステリ書評家・村上貴史/「週刊文春ミステリーベスト10」選評より)

「手がかりや動機、きっかけや結末がミステリとして結晶するその美しさを見事に体現していました」(ミステリ評論家・蔓葉信博/「ミステリが読みたい!」選評より)

「人間の、暗く、どこかリアルな一面が垣間見える。収録作品の数だけ、腹の底が冷える感覚が味わえる。(筑波大学ミステリー研究会/「ミステリが読みたい!」選評より)

「大胆だったり繊細だったりする罠が仕掛けられていて、かならず毎回、思わぬところで驚かされる」(角田光代・山本周五郎賞選評より)

「ハイレベルな短編の連打に魅せられました」(宮部みゆき・直木賞選考会より)

 評者の声からは、ミステリの匠とも呼ばれる米澤さんが、一分の隙もない短編集をつくりあげたことがよくわかる。切れ味極上のミステリの至芸をこの機会に楽しんでみてはいかがだろう。

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『満願』収録作品

夜警
交番勤務の警察官が主人公。交番に訪れたありふれたDV被害者。包丁を持って暴れる夫と対峙し、発砲するも殉職した同僚の警察官。その事実の裏に潜む心の闇とは?

柘榴
美しい母、母親に勝るとも劣らない二人の美しい娘、女たらしの父親。離婚協議が進むなか、娘二人のとった驚きの行動。美しく残酷な性(さが)が導いた結末とは。

万灯
東南アジアで資源開発に挑む在外ビジネスマン。命がけの交渉を進める中、一線を越えてしまうことになる。必然的に犯してしまった二つの罪。彼に審判は下るのか?

満願
殺人の罪を認め服役を終えた下宿屋の内儀。人柄を知る元下宿人の弁護士は内儀の行動に疑問を抱く。下された判決に抗おうとせず、刑期を勤め上げた女の本当の願いとは。

他二編を収録。

デイリー新潮編集部

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