嵐のメンバーに学ぶコミュニケーション力 松本潤さんの観察力 大野智さんの配慮

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即座に反応した大野さんの自然な反応

 テレビは、少女の全国大会での戦いぶりを生中継するのだが、その事前取材に大野さんが釜石にでかけた様子をカメラに収めていた。なぜ大野さんがこのコーナーを担当したかと言えば、少女は「大野君」の大ファンだったからだ。

 その憧れの大野さんが突然我が家にやって来た。「えい! やあ!」と足を蹴り上げ、こぶしを突き上げる道着姿の凛々しい空手少女は一瞬にして小学6年生の女の子に戻り「え? え? え?」と驚き戸惑っている。

「こんばんは! 練習中ごめんなさい。初めまして、大野です」

 大野さんが握手しようと手を伸ばした。すると、少女は、道着で何度もごしごしと両の手のひらを拭き取る仕草を繰り返す。大好きな人に、練習で汗ばんだ手を差し出すことなどできないのが乙女心というものだろう。その様子を見て即座に反応した大野さん。

「あ、そうだ、僕も……」

 大野さんは、少女以上に懸命に手のひらをズボンにこすりつけつづけるのだ。そこでようやく彼女に笑顔が見えた。そしてふたりの握手……。

 私は感動した。大野さんの「観察コミュニケーション」と自然な反応に。

「君みたいな空手の名人と握手できるかと思うと、僕の手は緊張でびっしょり。迷惑かけるのは僕のほうだ」と言わんばかりに、ごく自然にゴシゴシと手汗を拭ってみせた大野さん。「相手に気を使わせない」「恥をかかせない」という瞬時の配慮。あっぱれだ。

3坪で1日80万円を売り上げる達人

 と、ここで終わると、単なる嵐オタクだと思われかねない。私がここで伝えたいのは「観察コミュニケーション」の重要性だ。

 何も「嵐」に限らない。我々の周りには日常的に「観察コミュニケーション」を見事に使いこなしている人たちがいる。

 デパ地下のわずか3坪で1日80万円を売り上げる「とんかつまい泉」の山崎明希子さんが後輩育成の極意を、大筋、こんな風に述べている(「商業界」2013年10月号「売れる人の考え方と習慣」を参照しながら、梶原の解釈で書いた)。

通常、売る側の人は、「対お客」の姿勢ばかりに着目するが、山崎さんはそれでは足りない、と言う。

「新人には、お客様に対する態度よりも、むしろ周りのスタッフに対する目配り、心配りを指導します。例えば、新人がお客様から注文を頂戴した時、先輩が気を利かせてそっと紙袋を用意して手渡してくれた。その際、後輩が先輩に対し軽く頭を下げられるか? お客様への対応は日々慣れて来ますが、仲間に対する礼儀は気づかず、無造作に袋を受け取ったままというケースが多いものです。でもこれ、観察しているお客様からするとまずいですねえ」

 理由は、こういうことのようだ。

「お客様は店員さんの自分への態度と同時に、売る側、スタッフ同士の関係もしっかりチェックしていらっしゃる。仲間への心配りの仕草も観察しているものです。そこをおろそかにすると、気配りが行き届いた温かい売り場、という好ましいイメージを裏切ることになるおそれがあるのです」

 わずかな仕草が、インパクトあるネガティブなメッセージを伝えることになる。

「お客様の観察力を侮るな」――優秀な売り子さんは、ここまで気を配る「『観察コミュニケーション』のプロ」なのだ。

(以上『会話のきっかけ』から)

 たしかに、シェフが店員を怒鳴っているなど、人間関係の悪そうな店はあまり利用したくなくなるというもの。何となく感じのいい人というのは、その人が何かを発信する前の段階で、十分な観察力を発揮しているということなのかもしれない。

デイリー新潮編集部

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