「仇討」に刻まれた日本人のDNA――鼎談 広末涼子×浅田次郎×中井貴一(1)
9月20日から公開中の、映画『柘榴坂の仇討(ざくろざかのあだうち)』の原作者・浅田次郎さん、主演の中井貴一さん、その妻を演じた広末涼子さんが松竹本社で再会。座談会は大いに盛り上がった。
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浅田:『柘榴坂の仇討』は、良い映画に仕上がりましたね。原作は、仇討そのものではなく、登場人物が、その時々に何を考えているかを書いた「心理小説」です。だから、映画化が決まった時には、映像でそれを表現するのは難しいんじゃないかと心配だった。けれども、その辺がとても良く描かれていました。
中井:今、映像の世界では時代劇のステータスが下落しています。時代劇にもエンターテイメント性が求められるようになって、時代劇=アクション、忍者映画になってしまっている。勿論それは間違いではない。でも、その対極で、淡々と「人間の心」を描くのが日本映画の真髄だったと思うんです。最初にこの話を受けた時、時代劇がダメだと言われる中で、激しいアクションもない映画を作るのは勇気の要る挑戦だなと思ったし、自分が主役の志村金吾を演じるに当たって何を観てもらったらいいのか悩んだのは事実です。でも、日本映画の、時代劇の流れを止めないためにもやるべきだという思いが強く湧いてきた。金吾という男は、今も僕らのDNAに刻み込まれているはずの、日本人の心や武士道を体現しているような男です。そういう男をきちんと演じたいと思いました。同時に、金吾が持っている妻セツヘの愛情、仇討だけではない人間らしさが演じられたらと。
広末:セツは、夫に甘えたりはしないのですが、精神面では本当に信頼しあい、支えあっている。演じているとそれが良く分かります。現場でも、金吾を演じる中井さんに寄りかかっているような安心感がありました。セツは、凛としていて、芯が通っていて、貧窮を耐え忍びながら、三歩後ろで夫を支えていく、まさに日本女性の美しさや強さを湛えた女性です。今の若い世代の方も実は、男は男らしく女は慎ましくという日本人の生き方に、どこか憧れがあると思うんです。だから、世代を超えてこの映画を観てほしいなと思います。