小保方さんはネグレクトされてきた――「STAP細胞」とは何だったのか? 科学者本音座談会(3)

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 STAP騒動の裏にあった笹井(芳樹)氏の見込み違いとは。いまや信用が地に落ちた日本の科学界の渦中にいる科学者たちが、一連の騒動の表から裏までを、本音で語り合った。

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池田清彦 笹井さんは小保方(晴子)さんを採用する際、「この子は見込みがある」と決めちゃって、その後、疑わなかったんだと思う。少しでも疑っていたら、あんな大々的な会見はしません。今回の騒動は、そこから始まった気がしますね。

竹内薫 僕がカナダの奨学金で博士号を目指していたとき、日系企業から派遣された研究員も博士号を取得しようとしていましたが、教授の扱いがまったく違った。僕にはビシビシ、彼には腫れ物に触るような対応でした。自分の弟子であるかどうかで、対応に違いが生じることはあるんですかね。

榎木英介 小保方さんは早稲田でも東京女子医大でも理研でも、歩んできたすべてのところで、なぜか誰からも弟子とは思われずにネグレクトされてきました。

池田清彦 そういうのは、巡り合わせであるんですよ。僕にも先生はいない。

竹内薫 池田先生のように理論とフィールドワークなら理解できますが、実験には技術や作法が必要です。小保方さんが実験ノートを書けない理由も、そのあたりにあるのかもしれません。

榎木英介 ある種の医療事故のような印象です。穴があっても次の場所に穴がなければ行き止まりですが、穴の先にも、その先にもたまたま穴があった、というケース。これはスイスチーズ理論といって、医療事故や飛行機事故は、こうして様々な偶然が重なって起きてしまう。小保方さんのケースも同じような気がします。

丸山篤史 小保方さんは真っ当な競争を経て理研に入ったのではないそうですよ。

緑慎也 一芸入試に近い感じがしますね。

榎木英介 早稲田もAO入試ですから、いつも一芸入試。

池田清彦 でも笹井さんは、いい人材を採用したと思ったんでしょうね。

出席者:竹内薫(科学作家)、池田清彦(早稲田大学国際教養学部教授)、榎木英介(近畿大学医学部講師)、緑慎也(サイエンスジャーナリスト)、丸山篤史(医学博士)

「特集 威信と信用が音を立てて崩れ去った 『日本の科学者』本音座談会 『STAP細胞』とは何だったのか?」より

週刊新潮 2014年8月28日秋風月増大号掲載

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