「アナ雪」、「あまちゃん」、ジブリ最新作、直木賞候補に共通 いま注目は“ダブルヒロイン”!

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正反対の二人の主役

 朝ドラ「あまちゃん」、映画「アナと雪の女王」――爆発的人気を得た両作品に共通するキーワードは、ダブルヒロイン。アキとユイ。アナとエルサ。素直で奔放、明るいキャラクターとして描かれる主役の一方で、美しくどこか陰があり、でも、芯の強い相手役は、話が進むにつれその存在感をぐんぐんと増していく。「あまちゃん」では、主役のアキ一人ではなく、ユイとのツーショットがラストシーンだった。明確にヒロインを定めているNHKの朝ドラでは珍しいことだろう(ドラマのオープニングにはアキしか登場しない)。

自分の“呪い”を解けるのは、自分だけ!

 ヒロインが二人いれば、視聴者にとっては単純に、楽しみが倍になる。アナ派? エルサ派? と、人気投票も行われているという。しかし、ダブルヒロインといっても二人が対立するわけでないのが、いまの時流だ。二人の少女は、時にぶつかり時に励まし、互いに助け合いながら成長していく。しかも、成長といっても、新しい自分になるというより、いまある自分、「ありのままの自分」を認め受け容れること、というのもまた、新たな流行りといえる。

「アナと雪の女王」の前半の山場。エルサが主題歌「Let It Go」を歌い上げる場面が大きな感動を呼んだのは、彼女がひた隠しにしてきた自分の秘密の力――触れるものすべてを凍らせてしまう力によって、これから自分が住むための新しい城を作り上げたから。自分にかかった「呪い」、つまりはコンプレックスや劣等感、出自や育ってきた環境のために自分自身を縛っていたのを、自ら解き放ち、「少しも寒くないわ」と前を向いた。その自立した姿に、強さと逞しさを感じたからだろう。

 スタジオジブリの最新作「思い出のマーニー」もダブルヒロインの作品だ。同作品のプロデューサーの西村義明氏も完成披露記者会見のなかで「2014年になって『男性は女性を救えない、女性の問題は女性がなんとかしなくてはいけない』と社会的にはっきりしてきた。ダブルヒロインというのは時代の必然性があると思う」と語っている。

時流をがっちり捉えた、直木賞候補作

 7月17日に選考会を控えている第151回直木賞候補作、柚木麻子著『本屋さんのダイアナ』は、ダブルヒロイン小説にして、"呪い"を解き弱さを受け容れ、自らを肯定する小説でもある。

 大穴(ダイアナ)と彩子、正反対の二人が小学3年生で出会い、親友となってからの15年間を描く。

 終盤、彩子が己と初めて向き合う場面には胸が熱くなる。

〈自分を取り巻く状況を、真実を、そして己を、曇りなき目で見つめるのだ。(略)ガラスの中の自分をじっと見つめ返した。弱虫で、流されやすく、どこにでもいる娘。でも自分の足でそこに立って、自分を見据えている、一人の人間だった。〉

 躓いても立ち上がることができる、そんな強さを女の子にもって欲しい、という柚木氏の想いが込められている。

 雑誌「yom yom」での連載開始は2012年。期待の作家の慧眼光る、最強のダブルヒロイン物語にも注目だ。

デイリー新潮編集部

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