不登校や引きこもりの原因になることも──本当は恐ろしい「中1ギャップ」

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■成績優秀な子どもが、ある日突然……

「えっ、数学が60点?」。それまで勉強が得意だった長男が、中学1年の最初のテストで予想外の低い点数しか取れなかった。ほかの教科も似たりよったりで、70点以上は皆無。授業は真面目に受けているはずだし、宿題だって欠かさずやっているのに。

 小学校では成績優秀だった子どもが、中学に入学した途端、ガクッと成績が落ちてしまうことがある。教育関係者が「中1ギャップ」と呼ぶこの現象は、放っておくと不登校や引きこもりへつながるケースも少なくない。

■中学では急激に勉強が難しくなる

 子どもが「中1ギャップ」に陥る原因の一つに挙げられるのが、学習環境の大きな変化。あらゆる教科の難易度が上がるだけでなく、授業のスピードも速くなり、のんびりしていると乗り遅れてしまう。中学校の教科書を開いてみれば、小学校の時よりも明らかに文章表現が難しくなり、言葉や内容を噛んで含めるように教えてくれた小学校の先生は、もうそばにはいない。さらに、定期テストで順位が発表されれば、友だちとの差に大きなショックを受けることも……。それらが学習へのモチベーションにも悪影響を与えて、学校に行くこと自体が嫌になってしまう可能性もある。

 このように急激に難しくなる勉強に乗り遅れぬよう、近年注目されているのが、文章を読み解く力、つまり読解力の育成。実は「小学生まで成績優秀だった子ども」の大半が、特に読解力などを気にしないまま何となく勉強ができていたことが多く、難易度の上がった授業やテストの問題文の意味をきちんと読み解く力が不足しているのだという。

■読解力を身につけて、「中1ギャップ」を断つ

 国語教育のカリスマとして知られる現役教諭、二瓶弘行氏(筑波大学附属小学校)の最新刊『お母さんと一緒の読解力教室』でも、読解力不足による勉強の行き詰まりが指摘されている。

「そもそも、問題文を読む力がなければ、何を答えればよいのか、そして答えをどのように書けばよいのかさえわからないのです」(同書20ページ)

「中1ギャップ」への対抗策として、あらゆる教科の学習の土台である読解力を身につけるために、何をすればよいのだろうか? 同書は小学校の国語を対象としたものだが、基本的な考え方は中学生も同じで、説明文には「三つの大部屋読解法」、物語には「クライマックス場面読解法」と名付けた二瓶氏オリジナルのメソッドを提言している。親と子がこの作業に一緒に取り組むことで、学校の授業ではカバーしきれない細かな部分のケアまで可能となるという。

教科書の文章表現が難しくなっても、二瓶氏の「三つの大部屋読解法」などを活用することで読み解くことが可能になる。(『子どもの学力がぐんぐん伸びる お母さんと一緒の読解力教室』より)

 夏休みに入ってしまうと、学習の習慣そのものがおろそかになり、「中1ギャップ」の進行が進んでしまいがち。読解力の育成を中心にして、手遅れにならないよう、夏休み前からの対策が重要だ。

デイリー新潮編集部

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