たけしが語る 地球最後の日に生き残る人間は「お笑い芸人」
人類はどこから来て、どこへ向っていくのだろう。そして、もし天災によって突然文明が滅びることになったら?
好奇心の達人・ビートたけしが、「科学界のインディ・ジョーンズ」と呼ばれる生物学者・長沼毅氏と、文明の行く末について語り合った。
■ホモ・サピエンスの最大の特徴
たけし:おいらが数学の番組なんかやっていて思うのは、要するに四千年とか五千年前の数学が、ほとんどの現代人には解けない。結局、人類五千年の歴史は何人かの人がリードした蓄積が文明であって、全員が進化したわけじゃない。だから、ものすごい地震か何かで文明が崩壊したら、我々は服一つ作るのでも、てんやわんやになると思う。
長沼:そういった意味で、私も人間の未来というよりも、文明の未来のほうが本当は興味あるんです。だから、ものすごい天災が起こって、文明が滅んで、人類のほとんどが死んだとしても、ホモ・サピエンスという種族として、古代のような生活様式で細々と生き残ることはありえる。人間そのものよりも、やっぱり文明が大事だと思います。
たけし:いろんな生物がいる中で、ホモ・サピエンスだけが持っている最大の特徴というのは何になるんですか。
長沼:最大の特徴といえば、やっぱり協調性だと思います。DNA的に人間に一番近いのがチンパンジーですけれども、チンパンジーと比べても際立っているのが協調性。
協調性が育まれたのも、このホモ・サピエンスの二十万年の歴史の中の、多分この五万年ぐらいだという話です。
たけし:そこで何かがあったんだ。
■お笑い芸人は究極の人間!?
長沼:多分そのときに、非常にホモ・サピエンスの集団が小さくなった。小さい集団というのは、ありとあらゆる性質を持っているわけにはいかない。たくさんある性質の中で、限られた性質、たまたま協調性が豊かだという性質を持った個体の集団が生き延びたんだろうと思います。
逆に、協調性があったからこそ、天災などのいろんな事件があっても乗り越えてこられたのかもしれない。個人主義的な個体たちは、何か理由があって、そこで絶えたのでしょう。
たけし:個人主義的か、協調主義的かというのは、つまりそうした脳を持っていた個体ということですよね。
長沼:はい、そうです。ただ、そこはやっぱり遺伝子の影響がある。私は何か協調性に関わる遺伝子があるのではないかと思っているんですよ。
たけし:やっぱり現実の社会では、お笑い芸人が一番生き残るんだよ(笑)。古今東西、よいしょの上手い奴が生き残る。人間関係の潤滑油だからね。王様や武将の脇には、必ずピエロがいるでしょう。人類が絶滅に瀕しても、最後までしぶとく生き残ろうとするのはお笑いかな。
長沼:それはあるかもしれません。五万年前に、ある集団は生き残ったけれど、他の集団はなぜか滅びてしまった。その理由は、たけしさんが指摘したように、遊びとかお笑いがなかったからかもしれない。
たけし:お笑い芸人が究極の人間というのも情けない(笑)。
世界のキタノが長沼氏をはじめ、11人の達人・超人たちと語り合った本対談の全文は、対談集『たけしのグレートジャーニー』に収められている。