「時代の子」太宰に根深く潜む主題/『作家太宰治の誕生』

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 こんな歳になって、青春文学そのものである太宰治なぞを読み返す酔狂を起こすとは、思いもしなかった。その原因は、斉藤利彦の『作家太宰治の誕生』を読んだからである。

 自意識とか反抗とかいったものは、とっくの昔に卒業(それとも中退だろうか)したはずの当方としては、作家論とか文学論の対象としてのダザイにも、「上司幾太(情死、生きた)」(『人間失格』)の波乱万丈にも興味はない。本書のアプローチは、教育学者らしく当時の文部省や学校の資料を駆使し、昭和史の大海の中に、太宰治=津島修治という一人の過敏におののく青年を置き、「官権」の巨視的な目を最大限に活用して、「時代の子」を追っている。...

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