勝新太郎を抱いた男 現代美術の巨匠は「座頭市」が大好きだった

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 着流し姿でソファーにもたれかかり、なんとも幸せそうに目をつむる老人。その胸には浅黒い男を抱き、こちらもまた安堵しきった表情である。抱かれている男はなんと、日本が世界に誇る昭和の名優、勝新太郎。そして抱いている老人もこれまた驚きの「20世紀最後の巨匠」画家バルテュス。天才二人の親密さがこれ以上ない程にあらわれた一枚である。
■勝新太郎が抱かれた男、バルテュス

 ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家バルテュス。精緻な風景画や、危ういエロチシズムに包まれた少女を描いた作品などで知られ、神秘的で緊張感に満ちた独特の作風で世界中で愛され続けている。有名人にもバルテュス好きを公言する「バルテュスト」は多く、篠山紀信、坂本龍一、荒木経惟、江國香織、吉永小百合などそうそうたる面々が並ぶ。

現代美術の巨匠は「座頭市」が大好きだった

 そのバルテュスがほれ込んだのが、勝新太郎の「顔」である。映画館やビデオで何作ものカツシン作品を観て、来日したさい篠山紀信にセッティングを依頼し、念願の「座頭市」とのデートを果たす。二人は友誼を深め、カツシンはバルテュスのスイスの自宅へ何度も招かれる。そのときの様子を写したのが冒頭の一枚というわけだ。

バルテュスのアトリエにて

バルテュス展と漫画『カツシン』

 2014年4月19日より東京・上野の東京都美術館で「バルテュス展」開かれる。20世紀を代表する画家の国内では約20年ぶりの大回顧展である。日本初公開の代表作「夢見るテレーズ」を含む約100点に加え、愛用品なども展示される。冒頭写真の右側に写っている夫人・節子さんの一大決心で、生前のアトリエも実物を使って再現された。

 また4月21日発売の『月刊コミック@バンチ 6月号』では勝新太郎の生涯を描いたドキュメンタリー漫画「カツシン~さみしがりやの天才(スター)~」(吉本浩二著)のなかで、バルテュスとカツシンの交友が描かれている。二人の出会いから逢瀬の様子、スイスへの出国秘話や交流の様子などが関係者の証言を基に生き生きと描かれる。

 マスコミ嫌いでナゾの画家のイメージのあるバルテュス。カツシンの前で見せた意外な一面を、回顧展そしてドキュメンタリー漫画で触れてみてはいかがだろうか。

「カツシン~さみしがりやの天才(スター)~」(『月刊コミック@バンチ 6月号』)より

「カツシン~さみしがりやの天才(スター)~」(『月刊コミック@バンチ 6月号』)より

デイリー新潮編集部

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