アジアと子供を撮り続けた写真家管洋志さん 遺作がこの春出版へ

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 アジアを愛し、食と酒をこよなく愛し、子どもの撮影に愛を注ぎ続けた写真家――“デボちゃん”の愛称で親しまれた管洋志さんが亡くなって1年。4月10日の一周忌を機に、写真展「一瞬のアジア」が開催され、写真集も刊行されます。

■アジアを極めた写真家

 管洋志さんは44年間にわたってアジア各国を旅し、撮影してきました。1987年には『バリ 超夢幻界』をはじめ、アジアの民族的写真取材で、第6回土門拳賞を受賞。そして『バリ島大百科』『メコン4525km』『ミャンマー黄金』『奄美―シマに生きて―』などたくさんの写真集を編んできました。齢60代後半にさしかかって、そんなアジア取材の全貌を1冊にまとめることを考え始めていた矢先、管さんは癌に侵され、帰らぬ人となってしまったのです。

 2011年秋、日本写真家協会の理事として、震災を記録する写真展「生きる 東日本大震災から一年」と写真集刊行を企画。協会員全員に号令をかけ、自身も被災地に何度も足を運び、写真を集めていた最中に発病。その後入退院を繰り返しながらも、もちまえの熱き情熱でプロジェクトを牽引し、写真展と写真集の刊行を見事に実現しました。

■生きる希望を託して

 大病を抱えながら大仕事を成し遂げた管さんは、次の目標として自身の集大成とも言える写真集の構想を練っていました。『一瞬のアジア』というタイトルは、遺されたメモに愛用の朱墨の筆ペンで書き記されていたもの。判型やページ数もいっしょにメモされていました。

 病床で癌と闘いながら写真集を構想することは、管さんにとって生きる希望であったことでしょう。残念ながら生前にその夢を実現することは出来ませんでしたが、真理子夫人と長男の写真家、洋介さんがその遺志を引き継ぎ、遺された膨大なフィルムの中から、管さんらしい写真を選んで構成、写真集が完成しました。

 管さんの代表作に、カンボジアで撮影した夕景があります。アンバー色に暮れ逝く田舎道を、村人が一列になって歩く姿をとらえた1枚。まるで影絵のように、現実世界から遊離したファンタジックな光景。そのシルエットが、管さんの墓石に刻まれました。

管さんの代表作、カンボジアで撮影した夕景

代表作が刻まれた管洋志さんの墓石

管洋志写真展「一瞬のアジア」 東京展:4月9日~22日 銀座ニコンサロン
               大阪展:5月1日~14日 大阪ニコンサロン

管洋志写真集『一瞬のアジア』 新潮社刊
日本写真家協会編『生きる―東日本大震災から一年―』新潮社刊

デイリー新潮編集部

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