歴代最高得点の羽生結弦・奇跡的な帰還を果たした「はやぶさ」共通する成功のワケとは

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 2月14日ソチ冬季オリンピックにおいて羽生結弦選手がフィギュアスケート男子競技で日本に初の金メダルをもたらしました。19歳の新星が見事世界の強豪を抑え世界一となりましたが、圧巻だったのがショートプログラム。歴代最高得点の101.45点を出し圧倒的な強さをみせつけてくれました。

 フィギュアスケートの得点は、「技術点」と「演技構成点」の合計で争われ、技の難易度によって点数が上積みされていきます。羽生選手が歴代最高得点を出せたのは、失敗を恐れずハイリスクな技に挑戦し、見事成し遂げたからだったというわけです。

 話は変わって、いまから三年前、こちらも世界で初めて小惑星の物質を地球に持ち帰り、世界的にも注目を集めた探査機「はやぶさ」。一度は音信不通にまで陥り、帰還を絶望視されながらも、小惑星「イトカワ」起源の微粒子を無事地球に持ち帰り、大気圏突入で燃え尽きるけなげな姿は多くの日本人に感動をもたらしました。

 羽生選手の成功と「はやぶさ」プロジェクトの成功、実はこの奇跡のような二つの出来事には共通するポイントがあります。それはどちらも「加点法」で評価されていたということです。

■減点法ではなく加点法

「はやぶさ」のプロジェクトマネジャーを務めた川口淳一郎JAXA(宇宙航空開発機構)教授は近著『はやぶさ式思考法―創造的仕事のための24章―』(新潮文庫)のなかでこう語っています。

「どこまでやれたら100点満点かとは考えないでほしい。新しい試み、誰もやっていないことをたくさんやるのだから、達成できたことの得点を積み上げてください。」(川口)

「はやぶさ」プロジェクトを宇宙開発委員会の審査にかける際、プロジェクトの成果を判断するのに、従来のような「減点法」ではなく、「加点法」を使ってほしいとお願いしたそうです。

「減点法」は100点が上限で間違った場合そのぶんを差し引いていきます。この方法だと評価を受ける側は100点を目標として、努力をすればどんどん伸びる可能性があるのに、100点で止まってしまうことになります。しかし「はやぶさ」や羽生選手のように、誰も成し遂げたことがないことに挑戦し、未曾有の成果を手に入れるためには、成功を数え、難易度の高い挑戦にこそ高い評価が与えられる「加点法」が必要だったというわけです。

■加点法がもたらす成果

「はやぶさ」プロジェクトは我々に宇宙への興味、科学技術への関心をもたらしました。同様に羽生選手の活躍もスポーツへの興味、挑戦することの尊さを教えてくれました。閉塞感のある現在の日本にイノベーションの種を蒔くためには、成功を勝ち取れるような前向きな考え方が必要です。

 川口教授は同書で日本が負のスパイラルに陥らないために、将来花開くかもしれない研究に投資すべきだと述べ、

「かつて我が国の高度成長を支えたのは、満点主義の減点法でした。(中略)しかし、現在は、生産コストの増加で競争力はなくなってきていて、これが閉塞感をもたらしている要因なのかと思うところです。製造・生産という観点に、新しい着想、発想を採り入れた新しい製品を生み出すような質的な転換を進めなくてはいけないと思います。それを後押しする一つの方策が加点法でしょう。」(川口)

 と未来を切り開くためのヒントを教えてくれています。

 羽生選手のように世界と肩を並べ、それを乗り越え、「はやぶさ」のように不可能を可能にし、リスクと困難に立ち向かい、大きな成果をもたらすには、加点法の考え方が必要なのでしょう。

デイリー新潮編集部

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