幸せになるための技術書 道は開ける―あらゆる悩みから自由になる方法―
幸せになるための技術書/東条健一
気がつくと、私は長い間、ある病におかされていました。
それは、「何をやっても幸せになれない」という内面の病です。つねに悩み事や心配事、不安にとらわれていて、「自分ほど不幸な人間はいない」という確信を持っていました。たとえ、自分がどれほど恵まれた状況にいようと、この確信は揺るぎませんでした。
苦学生だったころの私は、五百円のラーメンで一週間は幸せでいられました。それが、就職してちょっとお小遣いが増えると、生意気にも一万円のランチを食べてみようと思いつきました。二十倍の価値がある食事だから、幸せも二十倍のはずです。ところが、実際にはまったく幸せを感じられませんでした。メニューには、二万円のランチも載っていて、それを食べたらもっと幸せだったかもしれないと、残念な気持ちを抱えたままで食べた一万円の食事は、五百円のラーメンにはるかに及ばない貧弱なものでした。
その時、私は初めて理解しました。自分の幸・不幸は、金銭では解決できないのです。幸せかどうかは、自分が「どう考えるのか」という内面の問題だったのです。
しかし、そうと気づいても、その後も自分自身を変えることができませんでした。ある逆境に直面するまでは……。
その逆境こそが、かえって私の人生の問題解決につながる転機となりました。それからは、あらゆる悩みから解放され、二度と自分を不幸と思わなくなりました。私はどんな時でも、「幸せ」を感じることができるようになったのです。自分なりに、「幸せになる技術」をつかんだつもりです。
私は、この体験を『リカと3つのルール―自閉症の少女がことばを話すまで―』(新潮社)という一冊の本にしました。ノンフィクションのストーリーとして執筆を開始しましたが、ある時、内容を相談していた知人から「ビジネス書や実用書としても書ける内容ではないか?」と言われました。
私は、すぐに答えました。
「それなら、すでに完璧な本が存在しているよ」
その本こそ、史上最高の人生のバイブルともいわれる、D・カーネギーの『道は開ける』です。『道は開ける』を一言で言えば、幸せになるための技術書です。人間は自然には幸せになれないかもしれません。幸せになるには、それなりの思考技術が必要なのです。技術ですから、身につけて行動すれば、誰でも同じ結果が得られます。
『リカと3つのルール』の執筆中は、「自分がいま書いている本は、『道は開ける』と同じテーマかもしれない」と思い続けていました。片や不朽の名作、片や新人作家の初めての作品という、両極端なレベルや評価の違いはありますが、二つの作品には、つながりがあります(ある場面では、あえて似たシチュエーションに描いてもいます)。
『リカと3つのルール』の実用書としての側面こそ『道は開ける』であり、『道は開ける』の本質をストーリー化したものが『リカと3つのルール』だ、とさえ言えるでしょう。
それならば、自分が得た気づきを軸に、『道は開ける』を、まったく新しい翻訳で再生させてみようじゃないか!
その結果生まれたのが、このたびの新刊『決定版カーネギー 道は開ける―あらゆる悩みから自由になる方法―』です。カーネギーの本は、一般的に「成功哲学」の本だと思われています。もちろん、その側面もありますが、本書『決定版カーネギー 道は開ける』を一読すればわかるように、むしろ彼は「成功」を人生の目的にしていません。まして、「金銭的成功」や「社会的成功」など、いくら成し遂げても「成功は半分」だと言います。では、どうしたら本当に成功できるのか? 何が人生の目的だと言うのか? それは、ぜひ本書でお確かめください。
これまで、『道は開ける』のほかの翻訳を読んだことがある人でも、本書を読めば、「カーネギーは、実はこういうことを言いたかったのか!」と、新鮮な驚きと感動の連続になるでしょう。