「iPhoneは欠陥商品だ」 未来を見通せなったバルマーとジョブズの差

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 タッチスクリーン上に表れる仮想キーボードで入力──。アップル、アンドロイドを問わず、これがスマートフォンの基本的なスタイルとなっている。しかし、iPhoneの開発プロセスではここに至るまで、紆余曲折があったという。
 最近刊行された『アップルvs.グーグル―どちらが世界を支配するのか―』(新潮社)によれば、2005年に作られたiPhoneの試作品は無線電話付きのiPodで、クリックホイールを電話のダイヤルに使うものだった。スティーブ・ジョブズは、2007年のMacworld Expoで新製品としてiPhoneを発表したときに、昔ながらのダイヤルがついたiPodのスライドを映し出すジョークで笑いを誘ったが、2005年の試作品はまさにそのイメージだった。

 もし、このままのデザインで開発が進んでいたら、iPhoneが21世紀最大級の発明品と呼ばれることになったかどうか。
 
■ジョブズの意見で現場は大混乱

 そんななかで強硬にタッチスクリーンと仮想キーボードの採用を主張したのは、ジョブズだった。翌06年にできた次の試作品は、その意見を取り入れ、現在の形にグッと近づいたものの、筐体がアルミニウム製だった。ジョブズはこの美しい試作品をたいそう気に入ったが、電波が金属をうまく通過しないことには気がついていなかった。もちろん、これも作り直し。

 画面にプラスティックではなく、特殊な硬質ガラスを使用することを求めたのもジョブズだった。プラスティック製の画面の試作品を鍵と一緒にポケットに入れて持ち歩いたらひっかき傷だらけになったというのがその理由だった。しかも、それを言い出したのが新製品発表の4カ月前、2006年秋のことだったので、現場は大混乱。実際に操作できるタッチスクリーンをガラスで作るには、画面を再設計しなければならなかったためだ。思い通りのものを作るために「中国全土からあらゆるガラス切断機を取り寄せなければならなかった」という。

■iPhoneは欠陥商品と言い放ったMSバルマーCEO

 苦難の作業の末、試作品は完成され前述したMacworld Expoでジョブズにより世界中に発表されたが、ここで思わぬ茶々を入れる人物が現れた。当時マイクロソフトCEOだったスティーブ・バルマーだ。「物理的なキーボードのないiPhoneは欠陥商品だ」というのだ。
 実は一部のアップル幹部も、「物理的なフィードバックのないキーボードを操作できるだろうか」と心配していたのだが、ジョブズは頑として譲らなかった。
「キーボードをつけたら、すべてのアプリで使うわけでもないキーが固定される。しかも、その画面という不動産の半分がそれで食われてしまう」

 バルマーとジョブズ、どちらが正しかったのかは、言うまでもないだろう。2011年、56歳で亡くなったジョブズは伝説となり、バルマーはPCからスマートフォンやタブレットへの時代の変化に乗り切れないまま、2013年夏に1年以内でのCEOからの退任を発表した。

デイリー新潮編集部

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