EU崩壊のきっかけは中国から ドイツと中国の危うい蜜月

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 23日、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が発表され、35年の歴史で初めて輸入車が受賞した。独フォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ」だ。国内の登録車に占める輸入車の比率は2013年に過去最高の8%台となる見通しで、なかでもVWはトップシェアを誇る。2位はメルセデス・ベンツ、3位はBMWと、日本におけるドイツ車のシェア拡大の象徴的な出来事となった。

 VWと言えば日本のみならず、中国でも大きなシェアを獲得していることで知られる。2012年に中国で販売された車のうちVWが約15%を占めていた。
 ところが話は自動車だけでは終わらない、今や中国はドイツにとって最大の市場(EU域内を除く)となっているのだ。

 国際ジャーナリスト・木村正人氏は、近著『EU崩壊』の中でドイツと中国の危うい蜜月について次のように解説している。

■人権外交から権益保護へ

 07年、ドイツのメルケル首相はベルリンでダライ・ラマ14世と会談した。すると中国の反発は想像以上に厳しく、機械類や輸送機器の対中輸出が大幅に落ち込んだのだ。

 ゲッティンゲン大学の調査によると、ダライ・ラマが首脳クラスと会談した場合、その国の対中輸出はその後2年にわたって年平均8.1%も減少していたという。

 ドイツに対しても大型契約を遅延させるなどの揺さぶりをかけ、中国が経済関係を外交カードとして使っていることは明らかだった。

 その後中国とドイツの貿易関係は正常に戻ったものの、メルケルの中国に対する姿勢は一変。中国企業の欧州進出に関する軋轢にも弱腰でお茶を濁し、明確な対立を避けるようになった。

 中国側も当時の温家宝首相が、ギリシャやポルトガルが怠惰で放蕩な「キリギリス国家」なら、ドイツと中国は勤勉な「アリ国家」だと共感を示した。

 EU内でイギリスが窓際に追いやられ、フランスの国力が衰える中、中国はドイツに照準を合わせている。メルケルは先端機器に欠かせないレアアース問題やフォルクス・ワーゲンなど中国に進出するドイツ企業の権益保護のため、単独で中国と交渉する必要に迫られている。

■中国重視の姿勢がEU崩壊の引き金に

 欧州のシンクタンクECFRの報告書ではEUの対中輸出の半分近くをドイツが占め、輸入でも4分の1近くに及ぶ。

 2012年メルケル首相の訪中は3度に及び、財界人や閣僚を連れて何度も「合同閣議」を開いている。停滞する米中の経済対話に取って代わるつもりだろう。

 ナチス時代の負い目から外交舞台では控えめに振舞ってきたドイツが、成果を期待できないEUの共通外交に業を煮やして、単独で動き始めているのだ。

 欧州経済の原動力であるドイツが、貿易相手としてフランスより中国を重視するようになれば、ドイツがEUやユーロ圏を牽引するメリットはどんどん小さくなる。

 ECFRの報告書は、こうしたドイツと中国の関係の危険性を指摘し、「ドイツを欧州にとどめておくためには、EUは早急に有効な対中戦略を実行すべきだ」と提言する。

 またゴールドマン・サックスのオニール会長は相互間の貿易が縮小にあるEUの国同士の通貨連合に疑問を呈し、「ドイツが20年までに通貨同盟を組むとすれば、フランスではなく中国との方が合理的だ」と指摘する。

 ドイツ経済のエンジンが減速する時、EUに本当の危機が訪れるにちがいない。それを支えているのは、皮肉にもEU分断を狙う中国なのである。

デイリー新潮編集部

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