独自の話芸を確立した人/『上岡龍太郎 話芸一代』
上岡龍太郎への聞き書きではすでに『上岡龍太郎かく語りき』(一九九五年、ちくま文庫収録)が出ているが、『かく語りき』が氏の半生をひとり語りするかたちだったのに対して、『上岡龍太郎 話芸一代』は、漫才の「漫画トリオ」活動停止後の、「上岡龍太郎」としての芸能活動に焦点をしぼって書かれている。
歌舞伎の中村勘三郎の葬式で、盟友坂東三津五郎は「肉体の芸術ってつらいね。そのすべてが消えちゃうんだもの」と弔辞を読んだが、それでも歌舞伎は映像や写真に残る。この本で語られている上岡の「話芸」は、ほとんどが記録として残っていないし批評もない。...