明治の「知」をめぐるドラマ/『国史大辞典を予約した人々』
一冊の無味乾燥な名簿を手がかりに、思わぬ世界が開けてくる。有名無名とりまぜた明治人の「知」への熱気が伝わってくる。なんとも不思議な本である。
日本史事典の嚆矢といえる吉川弘文館の『国史大辞典』は明治四十一年に刊行された。その前年に配られた『予約者芳名録』をたまたま入手した著者が、掲載された八千八百の人名、団体名をシラミ潰しにして、五年がかりでその名を特定していく。解明できたのは半分弱だが、それでも「知」をめぐる日本各地の小さなドラマの数々が浮かび上がってくる。...